教員インタビュー

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准教授 難波 ちづる
研究領域 : 社会史(フランス植民地史)

経済学部は、
知的で創造的な面白さを学べるところ。

研究者の仕事では、行動力やコミュニケーション力も磨かれる。

私の専門はフランス植民地史ですが、中でも20世紀のインドシナ(現在のベトナム、ラオス、カンボジア)、特にベトナムにおけるフランスの植民地支配について重点的に研究しています。また、第二次世界大戦期には、日本がインドシナに駐留しフランスと共同統治したことから、日本の植民地支配の問題にも関心を持っています。

私が植民地支配に関心を持ったのは、大学の卒業旅行でベトナムに行ったとき、観光客の多くがフランス人であることに驚いたのが始まりです。バカンスを楽しむ場として、かつて支配をしていた国をあえて選ぶのはなぜだろうと、不思議に思ったのです。

ここ数年、フランスでは過去の植民地支配が引き金となり論争や暴動が起こるなど、植民地支配をめぐる歴史は、きわめて現代的なテーマとなっています。そうしたことを踏まえ、今は、主に2つのテーマを研究しています。1つは日本によって一度はインドシナを追い出されたフランスが、日本の敗戦後に再び支配を確立しようとする復帰の過程。サイゴン裁判と東京裁判に関連させながら、その過程で何があったのかを明らかにしたいと思っています。もう1つは、第二次世界大戦開始直前に、インドシナからフランスに動員された労働者たちに関することです。ドイツ占領下でどのような生活をしていたのか、フランス政府は彼らをどう扱ったかを究明していきたいと考えています。

究明するというと机の上で思考をめぐらせている姿を思い浮かぶ人が少なくありませんが、歴史学では、足で稼ぐ情報ほど貴重なものはありません。ですから研究者には、行動力やコミュニケーション力がとても必要とされるのです。

リベラルで、多様性を認める懐の深さがある。

私は慶應を出た後、フランスに6年間、ほかの大学に2年間にいたのですが、外から戻ってくると内部で過ごしていたときにはわからなかった良さがいろいろと見えてきました。その一つが、リベラルなところです。中でも経済学部は、いい意味でそれが際立っているように感じます。例えば、経済学部でありながら、歴史のスタッフがここまで充実しているのはとても珍しいことです。もちろん歴史に限ったわけではなく、ほかの分野でも同様のこと。さまざまな分野にわたる多くの研究者を抱える経済学部には、多様性を認める懐の深さがある。それが、経済学部の特色でもあるように感じています。

やりたいことを見つけるチャンスの幅が広い。

経済は、人間活動のすべてではなく、あくまでも一部です。多様な知識を身に付けることは総合力を高めるだけでなく、経済を客観的に見る視点を磨くことにもつながるのではないかと思います。

大学受験をする時期に、大学でやりたいことが明確である人は少数派です。ちなみに私も、研究者の道に進もうと思ったのはずっと後のこと。ですから、やりたいことが見つかっていないからと言って、あまり焦らなくてもいいと思うのです。大学生活を通じて、先生や友達とたくさん接するなかで、徐々に見つけていけばいいのはないでしょうか。

人と出会うにしても、多様な分野の人がたくさんいるわけですから、自分がやりたいことを見つけるチャンスは幅広くあるはずです。とはいえ、漠然と過ごしていては、チャンスはつかめません。世の中で何が問題になっているのか、そのようなことが起こるのはなぜかなど、興味を持って物事を考え、それにまつわる情報を集める行動力が必要です。

そうやって、自分のオリジナリティを駆使してものごとに取り組むことは、社会に出てからもかならず役に立ちます。何より、そうした一連の作業には、知的で創造的な面白さがあります。経済学部はそれを経験できるところですから、知的好奇心を持って活動すれば、多くのことを得られるはずです。

(2008年10月23日取材)

※プロフィール・職位はインタビュー当時のものです。

プロフィール

1995年
慶應義塾大学経済学部卒業
1997年〜
2000年
慶應義塾大学経済学部研究助手
2000年
慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程満期退学
2006年
リヨン第二大学にて博士号取得
2008年4月より現職
2006年〜
2008年
日本学術振興会特別研究員PD(首都大学東京)

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