教員インタビュー

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准教授 神田 さやこ
研究領域 : アジア経済史

好きなことをストイックに追求できる環境が、
思考力を鍛える。

あのゼミがなければ研究者の私はいなかった。

南アジア、特にインドを中心とした経済の歴史を研究しています。これからの時代、インドが大国になることは明らかですから、あらゆるビジネスシーンでインドと関わることになるでしょう。日本やアメリカと違うシステムで動いているインド経済を理解する、その一つの手法が、私が研究している歴史的アプローチなのです。

今の研究に携わるきっかけになったのは、大学2年生の夏休みのインド旅行でした。服を買うにしろ食事をするにしろ、人々の暮らし方、生き方そのものが、日本はもちろん他のアジアの国々とはまるで違いました。別世界の空気感が漂うインドに、生まれて初めて「異国に来た」という印象を受けたのです。

考えてみれば、経済学には「生きる」という大きなテーマがあります。日本や欧米とは根本から違う「暮らす」や「生きる」があるのではないか。旅をするうちにそんな疑問を抱き、インドの経済史を学ぶことができるゼミを選択しました。そして、知れば知るほどもっと深く追求したいと思い「この道で研究者を目指そう」と、将来、進むべき道が見えてきたのです。私の大学時代は(今もそう多くはありません)、インド経済史を学べる経済学部は限られていましたから、とてもラッキーだったと思っています。

志を高く持てば、もっと伸びる。

私が学生だった頃も今も、経済学部の授業は、バラエティに富んでいると思います。それに比して、先生方の研究分野も思想のバックグランドも、多種多様。さまざまな分野のたくさんの専門家と接する機会は、そうあることではありません。しかも、専門分野を追及している人の話というのは、刺激的で面白いですから、臆することなく、先生たちとのコミュニケーションを積極的に取ることをおすすめします。

学ぶ側から教える側になって、経済学部生のレベルはとても高く、まじめで勉強熱心だとあらためて気づきました。けれど、そつなくこなせるがゆえに小さくまとまりがちなところが、多少なりともあるのが気がかりです。何かを追求することにどん欲ではないようです。そもそも優秀な学生たちなのだから、志を高く持てば、もっと伸びていけるはずです。

経済学は、社会や文化などいろいろな学問と関わる、学際的な学問です。ですから、経済にこだわらずほかの分野でも良いのです。もっと言えば、勉強以外のことでもかまいません。一つでも面白いと思えるものを見つけたら、ストイックに向かって欲しいと思います。

想像力と創造力、2つの「そうぞう力」で考える。

徹底的に追求することで、思考力は鍛えられます。それはどういうことかと言えば、追求する中で、たくさんいい本を読み、先生や友人とディスカッションをし、自分の頭で考えて書くという一連のプロセスが繰り返される。それにより、思考力そのものが、鍛えられるわけです。

そもそも思考力は、社会人に出てどのような領域・仕事に進もうとも、基礎体力のようにベースとなる力です。ところが、ゼミ生に論文を書かせると、ゴールを設定することはできても、そこまでのプロセス、つまり起承転結を展開させる思考力が弱い。その弱点を克服するためにも、思考力が鍛えられることを意識した指導を心がけています。

大学生活を始めるにあたり、「面白いと思えることを見つけ、その分野を徹底的に追求し、自分の考えで表現できるようになる」という4年間を、まずはイメージすることが大事だと思います。そして次のステップでは、「イメージ=想像」したことを、どう創造していくかを考える。創造していく過程で、多くのことを学ぶのだと思います。想像力と創造力、この2つの「そうぞう力」をいかに使うかが、とても大事です。勉強にこだわらず、趣味でもボランティアでもいい。好きなことで、2つの「そうぞう力」を思う存分、発揮してみてはどうでしょう。

(2008年10月23日取材)

※プロフィール・職位はインタビュー当時のものです。

プロフィール

1994年
慶應義塾大学経済学部卒業
1997年
慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了
2005年
ロンドン大学大学院博士課程修了(Ph.D.)
2007年
大阪大学大学院経済学研究科講師
2008年より現職

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