教授 井奥 洪二
研究領域 :科学技術社会論、材料科学、化学
環境・エネルギー・生命・医療を統合的にとらえ「自然科学と社会科学の融合によるくらしといのちのデザイン」を研究テーマにしています。Dr.コースの学生時代から人工骨や再生医療用材料の創製に取り組んできましたが、東北大学大学院教授に就任した7年前から科学技術の内包するリスクに対し、文理融合によるリスク回避の可能性を考えるようになりました。さらに3.11を仙台で被災し、福島第一原子力発電所の悲劇を目の当たりにして以来、このテーマをライフワークとしています。
研究者は、研究するほどに専門に深く特化していく傾向にありますが、スペシャリストである前にジェネラリストであることが重要です。さらに、スペシャリストとして磨かれた研究者は、再びジェネラリストとしての哲学を世界に示す必要があります。私は、骨代謝に組み込まれる人工骨を創製し、世界各地で発言・意見交換する過程において、この思考と哲学のサイクルを実感しました。「自然科学と社会科学の融合によるくらしといのちのデザイン」は、人の心を深く揺さぶるテーマです。
仙台で東日本大震災に遭い、その後の復旧過程でリーダーに必要な条件について考えさせられました。皆が困っている時に先頭に立つ勇気、大局的にものごとを捉え速やかに具体的指示を出せる決断力、小さなことには動揺しないタフな精神力、困っている人に手を差し延べることのできる豊かな心、このような力と心のあるリーダーが現在の日本には必要とされています。私は、日本の未来を創り、支えていくリーダーを育てることに全力を尽くします。慶應義塾で学ぶ学生諸君の中から、真のリーダーシップを発揮できる政治家、企業経営者、メディア関係者、NGOやNPOの代表などが数多く育っていくことを願っています。
(2012年11月取材)
※プロフィール・職位は取材当時のものです。
1988年MRS国際会議若手研究者賞、2000年無機マテリアル学会永井記念奨励賞、2001年山口大学教育改善提案表彰(教育アイデア賞)最優秀提案、2003年第2回キャンパスベンチャーグランプリ 特別賞(日刊工業新聞社賞)、2005年アジアバイオセラミックス賞、2008年日本無機リン化学会学術賞、2009年日本セラミックス協会学術賞、他受賞。
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