「格付け」の研究

                                      文責:加藤正史

  97年にアメリカの格付け会社Moody'sがタイのソブリン格付けの格下げを発表したことがアジア通貨危機の引き金となり、次いで同じくアメリカの格付け会社S&Pが韓国の格下げを行ったことで通貨危機はアジア全体に広がった。日本でも同年に北海道拓殖銀行、山一證券が倒産して、「格付け」が非常に注目されるようになった。自由な競争が行われる資本市場の中で格付けは欠かせないものであり、今後、日本企業にとって資金調達、経営改善などの面で、個人投資家にとっては自己責任による資産運用などで格付けとの関係がさらに深まるだろう。

  現在、日本で格付け会社として注目を浴びているのはMoody'sとS&Pの2社である。日本にも1985年に3つの格付け機関が誕生し、日本企業の格付けを行っているのに、なぜかアメリカの格付け会社ばかりが影響力を持つ。いくら格付け発祥の地がアメリカであり、豊富な経験を持つと言っても、果たしてそのアングロ・サクソン流儀である格付けは本当に日本の企業の格付けにマッチしているのだろうか。

  本論ではすでにこれらの疑問を調べるために、まず格付けの基本的な意味、性質、仕方を調べた。現在は格付け会社間の格付けの差について調べ、最終的には日本での格付けの今後について考えることにする。

また、格付けは本来、債務履行能力を示す指標であり、企業本体の「格」を表す指標ではないのだが、格下げは企業への死亡宣告とも受け取られかねなくなってきている。投資家から見れば、格付けは投資をする上で必要不可欠であるが、もし格付けが不適切であれば、格付けをされる側はたまったものではない。格付けは本当に正しいのか。単なる意見が影響力を持って良いのだろうか。日本企業とアメリカの格付け会社の間で問題になっている勝手格付けの側面からこの問題についても考えてみたい。

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