【イラク戦争関連用語集(イラク戦争関連兵器)】 [慶應義塾大学経済学部 延近 充作成]
イラク戦争関連年表のなかで出てくる兵器についての簡単な説明です。注記のないものはアメリカ軍の兵器です。リンクをクリックすると別ウィンドウで写真が表示されます。
名称 特徴:[ ]は出典,青字は写真出所
AC-130 AC-130 Gunship。空軍配備。C-130輸送機の対地攻撃・支援,偵察仕様。ロッキード社/ボーイング社製。乗員13人。4基のターボプロップエンジン搭載で,最大速度マッハ0.4,航続距離約2400km。
AC-130UはGAU-12 25mmガトリング機関砲,40mm機関砲,105mm榴弾砲搭載。1機1.9億ドル(2001年価格)。[US Airforce Fact Sheet,boeing.com]
AH-1コブラ AH-1 Cobra。UH-1 Hueyを改良した陸軍配備の対地攻撃ヘリコプター。ベル・ヘリコプター・テクストロン社製。乗員2名で巡航速度227km/h,航続距離507km。
最大8発の対戦車ミサイルの他,7〜14発のロケット弾発射ポッド2基,機関砲ポッド2基,20mmバルカン砲などを装備。
2004年にRAH-66 Comache ステルス・ヘリコプターに更新予定だったが,開発計画は中止された。
AH-1 SuperCobra。海兵隊配備の対地攻撃ヘリコプターでAH-1 Cobraの改良型。ベル・ヘリコプター・テクストロン社製。
乗員2名で巡航速度278km/h,航続距離587km。
最大8発の対戦車ミサイルAGM-114の他,2発の対空または対地ミサイル,7〜14発のロケット弾発射ポッド2基,機関砲ポッド2基,20mmバルカン砲,火炎放射器などを装備。[militaryfactory.com,army-technology,Air Cavalry]
AH-64アパッチ AH-64 Apache。陸軍配備の攻撃ヘリコプター。ボーイング社製。AH-1 Cobraの後継機としてヒューズ社が開発・量産化(ヒューズ社はマグダネル・ダクラス(MD)社の傘下に入り,MDがボーイング社と合併)。
乗員2名で巡航速度261km/h,最大速度365km/h,航続距離1900km。最大16発の対戦車ミサイルAGM-114の他,18発のStingerと2発のSidewinder対空ミサイル,2発のSidearm対レーダーミサイル,7〜14発のロケット弾発射ポッド4基,30mmチェーン機関砲を装備。[militaryfactory.com,boeing.com,Hyper Arms]
CH-46シーナイト
CH-46 Sea Knight。海軍・海兵隊の中型輸送ヘリコプター。ボーイング社製。1964年配備開始。乗員3名で完全装備の歩兵25名を輸送可能。ベトナム戦争で海兵隊員の輸送用中型ヘリとして活用された。
GE社製エンジン2基を搭載し,ツイン・ローターで最高速度267km/h,航続距離1,110km。
[usmc.mil,boeing.com,militaryfactory.comなど]
CH-47チヌーク CH-47 Chinook。陸軍の大型輸送ヘリコプター。ボーイング社製。1962年配備開始。乗員3名で完全装備の歩兵33名または24台の担架を輸送可能。機体下部のフックに約10tまでの貨物の吊り下げ可能。
ツイン・ローターで最高速度315km/h,巡航速度240km。7.62mm機関砲2門を装備可能。
[army.mil/fact_files_site,boeing.com,militaryfactory.comなど]
CV-22オスプレイ V-22 Osprey。ベルおよびボーイング社製のティルト・ローター型輸送機で,空軍配備のものがCV-22,海兵隊配備のものはMV-22。機体に比べて短い固定翼の両端に直径11.6mの3枚羽のローター各1基を装備し,ローターの回転軸を水平方向から垂直方向に変えることができるようになっている。これにより離着陸時はヘリコプターのように垂直に離着陸でき,巡航時には最高443km/hで固定翼機と同様に飛ぶことができる。戦闘員24人輸送可能,航続距離3700km。1982年に開発計画開始,1989年に初飛行,その後,開発費の高騰(cost overrun)のために開発計画の中断・再開が繰り返され,1994年に量産計画開始。[boeing.com]
F-15 F-15E Strike Eagle。空軍配備の対空戦闘・対地攻撃両用戦闘機。マグダネル・ダグラス(現在ボーイング)社製。乗員はパイロットと武器システム担当の2人。
航空電子システムにより,対地攻撃では低空・昼夜・悪天候時でも運用可能。
P&Wアフターバーナー付ターボファン・エンジン2基搭載。最大速度マッハ2.5超,最大航続距離3840km(補助タンク使用時)。
20mm機関砲搭載,AIM-7 SparrowとAIM-9 Sidewinder対空ミサイル各4発またはAIM-120 AMRAAM8発搭載。
対地攻撃では空軍保有の核または非核兵器搭載可能。1機3110万ドル(1998年価格)。[US Airforce Fact Sheet,boeing.com]
F-16 F-16C/D Fighting Falcon。空軍配備。対地攻撃から制空戦闘まで可能な多目的戦闘機。ロッキード・マーチン社製。P&WまたはGEのジェットエンジン1基搭載。
乗員1人または2人,最大速度マッハ2.0,戦闘行動半径500miles(860km)以上。20mm機関砲搭載,6発の対空または対地ミサイル搭載可能。
1機1880万ドル(1998年価格)。[US Airforce Fact Sheet]
IED Improvised Explosive Device:米軍用語で軍隊の正式装備としての爆発物以外の爆発装置を包括的に指す語。イラクで反米・反政府抵抗勢力が道路脇などに仕掛けて米軍車両などを攻撃する装置の呼称。日本の新聞などで「道路脇の爆弾」,「路肩爆弾」,「仕掛け爆弾」などと記載されている爆発物がこのIEDである。
手榴弾や迫撃砲弾を利用した爆発力の小さいものから高性能爆薬を使用した強力なものまである。設置方法も道路脇の地中に埋めるほか,空き缶や動物の死骸,人間の死体の中に隠すなど巧妙で発見は非常に困難となっている。
また起爆の方法も,実行者が爆弾の近くに隠れて標的通過時に有線で起爆する初歩的なものから,携帯電話や車のリモコンキーなどを利用した電波による無線遠隔起爆に高度化した。
IEDのみによる攻撃に加え,IED攻撃後に統制の乱れた米兵に武装勢力が攻撃を加える場合や,IEDで被害を受けた米兵やイラク治安部隊の支援に来た米軍にさらにIED攻撃や銃撃をするという攻撃方法がとられることもある。
爆発時にはIEDのみによる攻撃か武装勢力の銃撃がともなうのかが判断できず,また爆発によって米兵がパニック状態になる場合も多いため,米兵が無差別に周囲に発砲し民間人が死傷する例も頻発している。
2005年に入って米軍は電波による起爆を防ぐためバグダッド地域の米軍車両に電波妨害装置を取り付け,武装勢力が起爆スィッチを作動させても車両が通過後に妨害電波が弱まってから爆発するような対策をとった。これは米兵の被害を減少させたが,米軍車両通過後に爆発するため後続のイラク人車両や通行人の死傷者を増加させる結果となった。
武装勢力もIEDに常時電波を送り妨害装置によって電波が途切れると爆発する装置や赤外線センサーによる起爆装置など,対抗策をとったとみられ,2005年秋からはIEDによる米兵の死傷者が再び増加している。[米国防総省,AP通信,朝日新聞など]
OH-58カイオワ OH-58D Kiowa Worrier。陸軍の武装偵察ヘリコプター。ベル・ヘリコプター・テクストロン社製。乗員2名+5名で最高速度211km/h,航続距離413km。1991年5月配備開始。
メイン・ローター軸の頂部に赤外線映像装置,低照度テレビカメラ,レーザー測距・照準器,光学式監視装置とそれらから得た情報を送信する通信機器を収めたマスト・マウンテッド・サイトと呼ばれる観測装置を搭載。
対空ミサイルStinger4基,対戦車ミサイルAGM-114 Hellfire4基,7発のロケット弾発射ポッド2基,7.62mm機関砲などを装備。
[militaryfactory.com,fas.orgなど]
RPG Rocket Propelled Grenade:ロケット推進式榴弾。代表的なものが写真のRPG-7 携行型対戦車・対人ロケット・ランチャー
RPG-7は,第2次大戦時のドイツのパンツァーファウストに起源も持ち,1960年代初めにソ連が開発・実戦配備した。発射用火薬で弾頭発射後,弾頭の安定翼が開くとともにロケット推進火薬によって加速し,着弾時または4.5秒後に爆発する。
構造が簡単で加工が非常に容易で安価であるにもかかわらず対戦車火器として非常に効果的であるため,現在でも40カ国以上の軍隊が保有している他,紛争地域の反体制勢力やゲリラなどの非正規軍が頻繁に使用している。
口径40mm,長さ950mm,重量6.9kg,発射初速120m/s,最大速度300m/s,射程300m(移動標的)・500m(静止標的)。
RPG-7が使用された主な戦争・紛争として,ソ連・アフガニスタン戦争(1979-1989)でムジャヒディンがソ連の戦車・戦闘車両やヘリコプター攻撃に使用,
ソマリア内戦が激しさを増した1993年10月にモガディシュでアイディード派民兵が使用し,米軍攻撃ヘリコプター・UH-60ブラックホーク2機を撃墜した戦闘などが有名である。
イラク戦争関連年表中で,武装勢力が使用した武器としてRPGと記した以外でもロケット砲とあるものの多くはRPGだと思われる。[g2mill.com,pbs.org/frontline,defense-update.comなど]
UH-60ブラックホーク UH-60 Black Hawk。陸軍の汎用輸送ヘリコプター。ユナイテッド・テクノロジーズ(UT)/GE社製(シコルスキー社が開発,その後シコルスキーはUTの子会社に)。乗員4名で完全装備の歩兵11名輸送可能。UH-60Lは最高速度278km/h,航続時間2.1時間,航続距離567km。1979年配備開始。
7.62mm機関砲2門を装備。ソマリア内戦中の1993年10月にアイディード派民兵のRPG*によってブラックホーク2機が撃墜された戦闘を映画化した「ブラックホーク ダウン」で有名。
[army.mil/fact_files_site,sikorsky.com,militaryfactory.com,fas.orgなど]
プレデター RQ-1/MQ-1 Predator。空軍配備の無人偵察機で,可視光TVカメラ,赤外線カメラ,レーダー装備により昼夜全天候下で運用可能。ゼネラル・アトミクス航空システム社製。
4気筒エンジン・プロペラ推進で巡航速度130km/h,最大速度230km/h,上昇限度7620m,航続距離740km。
2基のレーザー誘導対戦車ミサイル(AGM-114 Hellfire)を搭載可能。1機4000万ドル(1997年価格)。
地上からの有視界操縦や事前にプログラムされた自律飛行の他,遠距離ではKuバンド帯通信衛星を利用して操縦される。
地上とのデータのやり取りは通信衛星を介してデジタル送受信され,GCS(地上管制ステーション)からの指令によるピンポイントの偵察・攻撃も可能。[US Airforce Fact Sheet]
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