ヨーロッパの死生観−死神のモティーフを中心に−

[自発展開型]
菊地藍(経済学部3年)
指導教員:山本賀代

要旨

本稿では、死神という死を象徴するモティーフが形成されていく過程について、グリム童話をはじめとし、古代ギリシャ神話、中世美術「死の舞踏」に見られるヨーロッパの死生観について、その変容を辿りながら考察した。また、中世から近代の図版資料を分析し、時代ごとに死がどのように描かれているのか、ということについてもあわせて確認した。その結果、ヨーロッパには古代神話に見られる循環的な死生観と、中世末期頃から登場した直線的な死生観という2つの死生観が存在することがわかった。循環的な死生観とは、生と死は繰り返し可能であるという考え方で、直線的な死生観とは、生と死とは一方通行であるという考え方である。グリム童話をはじめとするヨーロッパの民話には、これら2つの死生観が共存し、それぞれ物語の構造に大きく影響している。そして古い循環的な死生観から新しい直線的な死生観への移行が決定的となった頃に、死神という形象も定着していった、と推察することができた。