経済学的視点から見るアウトサイダー・アート

[自発展開型]
金子麻友美(経済学部3年)
指導教員:山田太門

要旨

本論文は、正規の美術教育を受けていないアーティストによる作品を指す「アウトサイダー・アート」が、どうして昨今その芸術としての価値が認められ、人々を惹きつけているかを探ることが目的である。研究対象は第2 次世界大戦以降の日本である。

アウトサイダー・アートの台頭をひとつの社会現象として捉えると、アウトサイダー・アートが受容されている背景には、経済的な要因を主とした人間の心理的変化があるといえる。それまで芸術であると考えられていなかったアウトサイダー・アートは、経済成長によって人々の消費の選択肢が増え、ニーズや価値観が多様化したことで、芸術であると認められるようになった。また、アウトサイダー・アートの台頭が間接的に表しているのは、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを求める人々の傾向、選択肢が多すぎることなどに起因する不安感、そしてめまぐるしい経済的状況の変化に対する反動である。こうした人々の心に上手く合致する「個性的」かつ「普遍的」な魅力を持っていたのが、アウトサイダー・アートだったといえる。