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教授 バティー, ロジャー
研究領域 : 環境経済学、東欧史

教育や研究では、
自分の考え方を明白に表現するのが大事。

ローマ人と遊牧民の関係という困難な研究テーマを選択。

日本といえば、1984年、兄がJETROのプログラムで高校教師を務めていた鹿児島を訪れたことがありました。日本には興味がありましたが、まさか自分が日本の大学で教えるとは考えもしませんでしたね。慶應義塾大学法学部に知り合いの先生がいて、彼から誘いを受けたことがはじまりでした。それから14年、日本で暮らしています。私の奥さんも日本人なのですよ。

古代ローマの歴史が専門です。1世紀から3世紀にかけてのローマ帝国の歴史を研究していますが、博士論文には、特にローマ人と遊牧民との関係をテーマに選びました。大草原の東に住んでいた遊牧民、サーマティア人とローマ人との関係を明らかにしたいと思ったのです。もともとローマ帝国に非常に興味を持っていましたが、あまり研究分野として確立されていなかったテーマをあえて選びました。ロシア語、ドイツ語、フランス語などさまざまな言語が必要な分野だったこともあり、イギリスでは研究する人がほとんどいなかったのです。義塾賞をいただいたのも、この論文から発足し、ようやく昨年出版できた本でした。この本は、研究をはじめた1984年から20年以上も費やした一つの成果でもあります。やはりうれしかったですね。

20年もの研究年数を費やした一生に一度の作品。

たとえば、遊牧民は毎日移動して、農業をしないという定説があります。調べてみると、じつは違っていました。それは、歴史家たちが作ってきた神話のようなものだったのです。農業を行う部族とそうじゃない部族が混在していたことがわかりました。そして、ローマ人は文明人で、遊牧民は野蛮人といった図式も単純すぎるものでした。両者には経済的な関係もあり、文化的な関係もあったのです。この研究テーマに取り組むためには、前8世紀から5世紀までの資料を使う必要がありました。研究者にとっては、壮大なプロジェクトです。一生に一度の作品でもあり、私のキャリアの節目ともなりました。

一方で、今は新しいテーマにも取り組んでみたいと思っています。一つは古代の医学。薬の歴史ですね。もう一つは人類と動物の関係。ローマ人とギリシャ人では、動物に対する考え方に違いがありました。非常に興味深い分野です。動物については、国連にいたときに携わっていた環境計画とも関係しています。この2つのテーマについても、少しずつ進めていきたいと考えているところです。

自らの考えを、説得力をもって表現することは社会人になっても役立つはず。

たとえば私が高校生で、どんな大学に行きたいかを考えると、自分の未来を考えることができる大学ということになります。その点で、慶應義塾大学経済学部は、意欲的にさまざまな取り組みを行っています。たとえば自由研究セミナーや研究プログラムなど、自らの研究成果をプレゼンできる多くの機会があります。それに、雰囲気も素晴らしいですね。

教育は、経験や思想の交換だと考えています。だから、自分の考えをきちんと整理し、もっとも論理的に表現できる機会があることは大切なことなのです。これは、教室の中だけではなく、社会人になっても大いに役立つことだと思います。

趣味はたくさんありますよ。特に音楽は大好きです。最近ではクラシックピアノを習っています。まだ4級ですけどね。それ以外にも、ギター。ブルースやジャズを弾いています。ライブもやったことがあります。研究と同じように、音楽も自分を表現する場なのかもしれませんね。学生によく言っていますが、教育はデータとかインフォメーションだけではいけないのです。それを論理的にまとめて、自らの意見や考え方を, 説得力をもって表現することが大切なのです。だからこそ、インタラクティブな方向に進んでいる慶應義塾大学経済学部は、とても魅力的だと思います。

(2008年10月28日取材)

※プロフィール・職位はインタビュー当時のものです。

プロフィール

1984年
オックスフォード大学西洋古典学部卒業
1990年
オックスフォード大学博士課程修了
1990年
国連環境プログラム スピーチライター
1995年
慶應義塾大学経済学部助教授
1996年
慶應義塾大学法学部講師
1997年
慶應義塾大学経済学部助教授
2007年
慶應義塾大学経済学部経済学科教授

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