教員インタビュー

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専任講師 柳生 智子
研究領域 : アメリカ経済史

経済の背景にある歴史を通じて、
経済に新たな視点を持つ。

子どもの頃の体験がアメリカ経済史につながる。

私は幼少時代を、アメリカの南部で過ごしました。1980年代には人種隔離政策は法律上終了しており、公立小学校では白人と黒人が同数になるようなクラス作りに取り組んでいました。そんな小学生時代を体験したことが、後にアメリカ経済史に関心を持った根底にあるのかもしれません。

大学2年の時に必修だった経済史の授業が、この分野に興味を持つきっかけでした。3年生になって三田に行ってからアメリカ経済史のゼミに入り、そのまま修士課程にも進みたいと考えるほど高い関心を持ち続けました。

19世紀前半、南北戦争前の時期をアンティベラム期と呼びますが、この時代の奴隷制度と労働、生産の関係から、私の研究ははじまりました。奴隷は、この時期奴隷商人の介在によって南東部から南西部へ移動しているのですが、その移動に伴う経済発展について研究を進めるため、当時の資料が多数現存している南部のノースカロライナ大学へ留学し、博士論文としてまとめました。今は少し時代をさかのぼり、18世紀アメリカの植民地時代の大西洋史、アトランティックヒストリーといわれる分野について研究を進めています。南北アメリカとヨーロッパ、アフリカという4大陸にまたがるフレームワークにおける、人・モノの移動を含めた相互関係は非常に興味深い研究対象です。

英語力の向上と共に、経済学と歴史の関係性をテーマに。

この春から慶應義塾大学の経済学部で授業をはじめることになったのですが、まさか出身大学の学部に戻れるとは夢にも思っていなかったので、とてもうれしかったですね。

それに、専門分野を題材にできることも恵まれていると思います。担当が英語なので、語学力の向上はもちろんですが、アメリカ経済史、アメリカ外交史、国際関係史などを題材としているのは、経済活動の背景に歴史があるという観点を学生たちに身につけて欲しいと考えるからです。経済学とは直接関係ないように見える政治や外交、社会問題が経済動向にどのような影響を与えているのかを考える契機になるような授業ができれば、と思います。授業では歴史的な解釈ができるように、一次資料も含めた様々な文献を読み議論することを目標としていますが、アメリカに関してはベトナム戦争や人種問題、国際関係ではルワンダやユーゴスラビアの内戦をテーマにした、政治色が強い映画を題材に使うこともあります。映画といえば、留学中は小さな大学街に住んでいたので娯楽もあまりなく、気分転換は映画でした。いつも映画館はいっぱいで、懐かしい思い出です。

経済学部には、学生の探究心を満たす環境がある。

私が学生だった頃は、先生に質問をするというのは、少々敷居が高いという雰囲気がありました。しかし、今は語学のクラスが少人数ということもあってか、学生たちと交流が持ちやすくなり、コミュニケーションの面でも充実感があります。私が慶應義塾の経済学部出身であることから、英語に限らず自分の経験も踏まえて学部全体の話ができるのは役に立っているようで嬉しく思います。そんな雰囲気の中で、授業では英語で自分の意見を発表しやすいような環境づくりに心がけていきたいと考えています。

学生時代の経験からも、今、講師という立場になっても、慶應義塾の大きさや奥行きを強く感じます。経済学部だけでも非常にスケール感があり、やりたいことや興味があることに関連する専門家が必ず揃っているというメリットがあります。しかも、様々な設備、資料、プログラムの充実など、これ以上は望めないのではないかと思えるほど、学生の探究心を満たす環境が用意されています。大学全体の方向性も、多様な大学院の開設など、さまざまな分野で活躍できる人材を送り出そうという意欲が見て取れます。自分の道を見つけたいと考える皆さんには理想的な環境ではないでしょうか。

(2008年10月28日取材)

※プロフィール・職位はインタビュー当時のものです。

プロフィール

1996年
慶應義塾大学経済学部卒業
1998年
慶應義塾大学経済学研究科修士課程修了
1998年〜
2000年
慶應義塾大学経済学部研究助手
2006年
ノースカロライナ大学チャペルヒル校大学院歴史学研究科博士課程修了(Ph.D.)
2007年
日本学術振興会特別研究員、明治大学客員研究員
2008年4月より現職

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