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教授 山田 太門
研究領域 : 公共経済学、財政学、公共選択、NPO経済論、文化経済学

一つの研究から次々に好奇心が生まれ、新しい研究へと発展していった。

かねてから興味のあった学者の書物に出会った喜び。

1970年に慶應義塾大学の助手となり、あるとき、図書館の一角で偶然にもかねてから興味のあった学者であるジェームズ・ブキャナンの論文に出会いました。見つけたときの喜びは、他にたとえようもないほどでした。そうして、私の研究は一人の学者に惹き付けられて、それを入口にどんどん次へつながっていったのです。それからおよそ40年間、学者として恵まれた日々を重ねることができました。

私の研究を振り返ってみると、一つの研究がきっかけとなって、次々に新たなテーマに向き合うことができたように思います。まず社会的な公正という問題についての研究にはじまって、それを理論だけではなく、実際の政治や政府の問題としての研究に取り組むようになっていきました。そして、公共経済学という学問につながり、それが財政学へと発展していったのです。財政学は古い学問で、研究を進める中でその面白さや重要さに気づき、特に公共選択というテーマに賛同しました。政府だけではなく、非市場活動、NPOなど民間が主体となる営利ではない団体の活動にも興味を持ち、さらに援助対象としての文化活動へと好奇心は広がっていったのです。

ゼミの合宿で川が氾濫し、避難したこともよい思い出。

慶應義塾大学には、学問において自由の気風があります。研究者、学者にとって、そして学生にとっても、規制されず自由でいることができるというのは、極めて大きな意味のあること、価値のあることだと思います。同時に、立派な先輩方が数多くいます。そんな方々が築き上げた伝統を受け継いでいくのも、私たち学者の大きな役割だと感じていました。それはこれからを担う学生たちにも共通することです。自らの学ぶ学問と伝統が結合して、慶應義塾ならではの学問に発展させることができる。ぜひ、自らのテーマに真摯に取り組んでほしいと思います。自由を謳歌し、のびのびと個性を活かした活動を行ってほしいですね。

ゼミでの思い出も数え切れないほどあります。ゼミ合宿で山形の赤倉温泉に行ったときのことですが、台風で宿の近くの川が氾濫しそうになり、避難したこともありました。忘れられない思い出です。学生たちとの飲み会にもずいぶん参加したものです。最近でこそ、歳のせいか、あまりお呼びがかからなくなってしまいましたけれども。本当にさまざまな思い出があります。そんな学生たちとの交流も、研究同様、私の大切な宝物なのです。

研究に終わりはない。退職後も勉強を続けていく。

都心にありながら、一歩足を踏み入れると、静かな環境。慶應義塾大学の独自の雰囲気はそんなところからも生まれているのではないでしょうか。昔も今も、学生たちの生活スタイルは近代的で、新しいものをどんどん取り入れる傾向がある。私が学生の時代から、ずっと自由主義的な人間が多いような気がします。自由な雰囲気は、そこから醸成されてきたのでしょう。

日々、学生たちとふれあって、慶應義塾大学の学生たちは素晴らしい能力を持っていると感じてきました。私たちの時代は国立大学に対するコンプレックスが少なからずありましたが、今ではまったく感じられない。むしろ、慶應義塾大学に大いなる誇りを持っています。もっと自信を持っていいし、持てる能力を存分に発揮してもらいたいと考えています。私も退職後、40年も続けた研究とこれからも対峙していきたいと思います。取り組むべきテーマは、まだまだあります。研究に終わりはありません。勉強しなおすつもりで、新しいスタートを切りたいと考えています。

(2009年12月17日取材)

※プロフィール・職位はインタビュー当時のものです。

プロフィール

1968年
慶應義塾大学経済学部卒業
1970年
慶應義塾大学大学院修士課程修了
慶應義塾大学経済学部助手
1973年
慶應義塾大学大学院博士課程修了
1976年
慶應義塾大学経済学部助教授
1989年
慶應義塾大学経済学部教授

この間、1978年〜80年プリンストン大学客員フェロー、93年〜94年同大学ウッドロー・ウィルソン・スクール、およびエール大学PONPO研究所客員フェローとして留学

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