専任講師 吉川 龍生
研究領域 : 中国近現代文学、中国映画史
日中の交流事業に関係していた父に連れられて高校1年の時に訪中した経験があったため、大学進学後に中国語を履修し、もう少し中国語を勉強してみたいという思いもあり中国文学専攻に進みました。いろいろな情報がどのように伝わっていくのかというようなことにも興味があったため、メディアに対する規制が厳しい現代中国で、どのような文学活動が行われているのかということに興味を持ち、文化大革命後に登場した王朔という流行作家に注目し、王朔ブームの影にどのようなメディア状況があるのか検討することを卒論のテーマにしました。その後、池莉という流行作家についても研究範囲を広げ、修士論文を書きました。最近は、文学作品の翻訳にも興味を持っています。
映画についてはもともと興味を持っていたのですが、映画祭の舞台挨拶で通訳や司会をする機会を得て中国の映画人とのつながりができ、なかなか観られないと思っていた作品を鑑賞できたり、今まで知り得なかった情報を得られるようになったりしたことで、高校教諭として就職した後から研究を始めました。メディア政策や文学にも多大な影響を与えた、孫瑜監督『武訓伝』と毛沢東による「『武訓伝』批判」に注目して研究しています。近年は、映画字幕の翻訳や日吉電影節という日吉キャンパスを会場にした映画イベントの運営もしています。
王朔や池莉という作家は、小説がテレビドラマや映画に映像化されることが非常に多いことで知られる作家です。活字が映像になっていく過程で、どのような「ソウゾウリョク(想像力・創造力)」が働いているのか、異なる媒体でイメージが伝わるときどのような相互作用が起こるのか、またそこにはどのような政治的・経済的な力学が働くのか、ダイナミックな動きを見せる現代中国社会を反映してめまぐるしい変化を見せる文学や映画の世界は非常に刺激的で、目が離せません。1930年代から50年代にかけての孫瑜の作品を中心とした研究も、現在を生きる中国の人たちの「ソウゾウリョク」がどのようにして形成されてきたのかを感じることができるようで、違った魅力があります。
経済学部では、主に中国語を担当しています。中国語に限らず、第二外国語という科目は、いわば「3Dメガネ」のような存在だと思っています。大多数の人が長年勉強してきた英語と経済学部の専門科目だけでは見えてこない世界の姿を見ることができるようになる、第三の視点を獲得するツールだと思います。「大学を卒業すれば忘れてしまう役に立たないもの」などと言う人もいますが、実用性という価値観からだけではなく、新しい世界を見ようという意気込みをもって第二外国語に取り組んで欲しいと思いますし、そうした意気込みに応えられるような授業をしたいと思っています。
(2011年12月取材)
※プロフィール・職位はインタビュー当時のものです。
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