准教授 坂井 豊貴
研究領域 : メカニズムデザイン、社会的選択理論
学生のときは演劇を熱心にやっていて、一時期はスタジオライフという劇団に所属していました。しかし私にとって演劇は、それ自体の難しさと、それで生活していくことの難しさが強く、4年生になってから経済学に転向しました。私にとっての経済学の面白さは、その高度な構築性と操作性にあります。演劇は本質的に制御不能なので、この点については対極的だと思っています。私の研究テーマは、いくつかの倫理的要請を満たす価値判断基準の存在問題や、いくつかの実用的要請を満たす制度の設計可能性問題ですが、そこでは公理的アプローチという分析手法を用います。この手法は初等的な数学を用いて、倫理や制度に関する曖昧になりがちな話を経済モデルの中で厳密に定式化し、論理的に分析することを可能にします。それぞれの研究テーマも面白いですが、それらを扱う公理的アプローチの自由性に私は強く惹かれます。
私は自分の専門分野の専門家なのですが、その分野であればひどい論文でもそれなりに面白く読めます。これは真のコーヒー好きがまずいインスタントコーヒーでも飲めることや、アル中がみりんを飲むのと一緒です。面白さというのは関係性の問題であり、そいつの出来がいまいちでも、こちらの面白がる能力が高ければ案外面白がれるものなのです。だからもしあなたが何かを面白くないと思ったら、それはそいつのせいじゃなくて、自分の面白がる能力が低いせいではないかと疑ってみるとよいです。であればその関係性は変えられるかもしれない。世界とはあなたを取り巻く周囲であるとともに、あなたの認識そのものです。面白いことが沢山あるとよいなと思います。
(2011年12月取材)
※プロフィール・職位はインタビュー当時のものです。
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