教員インタビュー

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准教授 中嶋 亮
研究領域 :応用計量経済学・産業組織論・労働経済学

たまたま受講した講義で今の研究テーマに出会う
将来の見通しがききにくい今の時代、一見無駄に見えることもたくさん経験しておこう

研究テーマとの出会い、その魅力

研究の専門分野は応用計量経済学で、現在のメインの研究テーマは社会的相互作用の実証研究です。この研究テーマを平たく言えば、人と人のツナガリの経済分析となります。経済理論をたよりに人のツナガリが及ぼす影響を観察し、その影響力を現実のデータで確認する研究を行っています。

テーマとの出会いは、まったくの偶然です。留学していたニューヨーク大学で博士課程3年生の時にたまたま受講した講義がきっかけです。確か「Economic Analysis of Local Interactions(局所的相互作用の経済分析)I・II」とかいう実にツマラなそうな名前の講義だったはずです。極めて不人気な講義で私以外に受講生がいなかったため毎回発表させられて、もうやめたろかいと何度も思いました。でも、結果的に博士論文を経て現在のテーマにつながっているので途中でやめなくて良かったです。

たまたま選んだテーマのわりには色々と楽しい研究トピックが湧いてきて結構楽しんでいます。博士論文ではピア効果とよばれる社会的感染を対象に実証分析をしていましたが、今は、人と人の間の知識や技術の拡散、さらには、人と人の「つきあい」や「ネットワーク」の形成とその影響なんかに研究の関心があります。

こうした研究テーマに関心を持っているのが私以外誰もいないとかいう話だと、ちと寂しいのですが、幸いなことに世界を見渡せば同じ興味をもっている経済学者もある程度はいるようです(それほど多くないけど)。どうやら社会的相互作用の研究はゲーム理論モデルの実証研究の一つとしてぼちぼち生き残っているようだし、研究競争もそれほど熾烈ではないので、それは、ほんまにラッキーやなあと思います。

学生へのメッセージ

人生には予想もしなかったこと、つまり、偶然にうまれた予期せぬ出来事がしばしば発生します。実際、社会的相互作用をテーマに経済学の研究をしていることや、慶應義塾大学経済学部で講義をさせていただけることなぞ、京都疎水わきの小汚い下宿にくすぶる農学部学生であった20年前の自分には思いもつきませんでした。将来が予想どおりに行かかないと考えるとちょっとコワイ気もしますが、予想通りにいかないことから生まれる楽しさもあると思います。

だから、将来をきっちり計画して、その実現に向けて遮二無二に頑張る学生生活ももちろん良いのだけど、どうせ計画どおりにいかんのやからと興味の赴くまま色々な事をとりあえず試してみる試行錯誤の学生生活も悪くないかもしれないですね。物事が複雑に絡まり合って将来の見通しがききにくい今の時代は、一見無駄に見えることをたくさん経験しておくほうが(遊びだけでなく勉強もね)、将来の予期せぬ偶然により良く対処できるのかもしれんなあと思います。

(2012年11月取材)

※プロフィール・職位は取材当時のものです。

プロフィール

1994年
京都大学農学部農林経済学科卒業
2004年
ニューヨーク大学経済学部博士課程修了 (Ph.D. in Economics).
大阪大学社会経済研究所特任研究員、Duke University Research Scientist、筑波大学専任講師、横浜国立大学准教授を経て、2012年10月より現職。

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