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パリ政治学院とのダブルディグリー・プログラム

Sciences Po滞在体験記

(2011/5/26)

高田亮太(修士2年)

Keio University-Sciences Po ダブルディグリープログラムの概要

このダブルディグリープログラムは、まず四月からの半年を慶應で勉強し、その後一年間をパリ政治学院で、そしてまた慶應で一年間勉強するという、2年半のプログラムです。

パリ政治学院での一年間は大きく二つに分かれています。一つ目は学業で、これは三学期のうち最初の二学期を占めています。二つ目はインターンシップで、三学期目にプログラムや研究に関係のある機関、企業等において経済分析を行うというものです。このように、プログラムの中でインターンシップを行うことが求められている形態は他のヨーロッパにおける教育機関においてもよく見られます。

学校について

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私は、学業の部分、パリ政治学院ではEPP(Economics and Public Policy)というプログラムに入りました。このプログラムは他のフランスのグランゼコール二校(エコールポリテクニーク、ENSAE)と合同のプログラムであり、計三校の生徒や教員、施設を用いて授業が行われます。

パリ政治学院は、パリの中心にありブティックも多く並ぶサンジェルマン大通りに点在するキャンパスを持ち、行政機関等からも近くまさしく「フランスの中心で学ぶ」と感じることのできる場所です。また、学生の多くも華やかな服装で、クラスの後は近くのカフェで議論を交わす姿がよく見られます。EPP内のパリ政治学院の学生は前年を海外の大学で過ごしており、いろいろな国の大学についての話を聞くことができました。

最も多くの時間をすごした、プログラムの中の一校、エコールポリテクニークという工学系の学校は、フランスで最も影響力がある伝統的なグランゼコールで、パリ郊外にあります。この学校では一年の兵役もしくはボランティアがあり、また学生は在学中に給料を支払われる、最終学年には他の教育機関に行くなど、前述のパリ政治学院とは全く異なった雰囲気でありました。構内においては、歴史の教科書で見たナポレオンのような制服をきて刀を差した学生や、軍服を着ている先生とよくすれ違います。EPPにいる友人の一人は前年を空軍で過ごしており、アフリカの基地にいたときの話など、大変興味深かったです。このEPPプログラムは学生の大半がフランス人で、二、三割ほどが外国人学生という構成です。

授業について

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科目は一般的な経済学の授業のほかに法律や政治、公共政策に関するものがあります。授業は大教室における授業形式の「カンファレンス」と、「プチクラス」とよばれる、少人数による演習や議論を中心とした形式の二部構成になっております。教員の多くは中央銀行やさまざまな機関で実務に携わっている方で、学校以外からもシンクタンク等からいらしている理論家の方が教えています。私が一番気に入っていたEconomic Policyという授業ではフランス金融庁の先生と経済系シンクタンクの先生が並んで座り、講義をしながらお互いに議論をするというもので、「実務家が理論をどのように用いているか、扱っているか」等面白い発見がたくさんありました。評価は、経済科目は基本的には試験ですが、中にはプレゼンテーション、レポート、もしくはそれらの組み合わせで評価が決まる科目もあります。

インターンについて

三学期目のインターン先は、自分で探すか、学校側のリストをあたってみることができます。私はブリュッセルにある欧州委員会関連機関で政策分析をしております。他の学生は、国際機関、官公庁、シンクタンク、金融機関、戦略コンサルティングファーム、もしくは大学の教授の下などでインターンをしています。

オフについて

クラスメイトと大学以外でかかわり親交を深めること、他のプログラムで勉強している学生と議論し大学の全体像をつかむこと、フランスの文化に入り込むことを目的としオフ活動も積極的に行いました。

パーティー

大学・学生の主催しているパーティー等が多々あります。大学はよくカクテルパーティーを学内外で主催します。目的としては、一学年上の学生にプログラムの概観を教えてもらったり、先生とワインを飲みながら意見交換をする場所となっており、その時々の問題点等を相談するいい機会でした。

学生の主催するパーティーはたくさんあります。大きな場所を借りて行うものや、誰かのアパートで行うものがあります。他のプログラム、学外の学生と出会う機会であり、またパリを体感するいい機会でした。

旅行

パリは交通網に大変恵まれ、ヨーロッパ内のみでなく、アフリカまでもリーズナブルな価格で行けます。またフランス国内を旅行する際も、学生割引等が存在するので、電車で欧州の主要都市はすぐに行けますし、航空会社も格安航空券をたくさん用意しています。アルプスにスキーに行った際は往復で3000円ほどでした。私自身は以前スロバキアに住んでいたこともあり、どちらかというと旅行よりもスロバキアに帰郷するほうが多かったのですが、それでも8カ国ほど回ることができました。

スポーツ

私は学校のフットサルチームに所属しておりました。週二回の練習や、他のグランゼコールとの試合、チームメートとの活動はフランス語を試してみるいいチャンスでした。(2011年5月)

マクリン謙一郎(修士2年)

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私がこのプログラムに応募し、一年の目標としたのは「自分の幅を広げる」ということでした。学部生の頃は中妻照雄研究会でファイナンスとベイズ統計学の研究を、また研究プロジェクトでは認知学の見地から映画論を二年間研究してきました。ゼミや研究プロジェクトを通して多くを学び、論文を書いていく上で、ある程度の専門性を身につけたつもりでしたし、自分の考えや哲学の方向性も形になってきていました。専門分野の深化のために大学院に進学するか悩んでいたとき、一番の懸念だったことは学んだことや自分の考え方が専門的になりすぎてしまわないか、実社会で求められている知識、能力から乖離してしまわないか、ということでした。

しかし経済学研究科がパリ政治学院とのダブルディグリープログラムの候補生を募集していると聞き、私の懸念は払拭されました。まず一つは学問的な点での幅広さを得られるからでした。私の専門はベイズ統計学のファイナンスへの応用ですが、パリでは主に公共経済学を学んでいます。ファイナンスと公共経済というのは切っても切り離せない関係にありますが、学部の頃は主に統計や計量などの数理的手法を中心に勉強しており、実際に政府や国際機関で公共経済の仕事をしている教授や講師の授業や視点は非常に斬新なものでした。もう一つは言語、文化的な点です。私は幼少期から日本と米国を行き来し、両方の言語も文化も理解していますが、他の言語の勉強は日吉時代にフランス語をとっただけで長期間第三国に住んだこともありませんでした。フランスに住んでからまだ9ヶ月ですが、フランス語にも少し慣れ、フランス、欧州の文化についても幾分か理解が増えたと思います。特にフランスは休みが多いため、休みを利用して10カ国弱を旅行することができ、色々な国の人や文化に触れることができた点は非常にいい経験になりました。

最後に(これはパリ政治学院へのダブルディグリーが決まったあとですが)フランス政府と仏金融大手のクレディ・アグリコル(CA)との奨学金を通して実務を学べる経験が得られるからでした。この奨学金はフランス政府とCAが学費を払う代わりに半年間CAでインターンとして働くというもので、私はインターンとしてCAと仏金融大手のソシエテ・ジェネラルの合弁運用会社のアムンディでクオンツとして働きながら勉強させていただいています。

フランスにきて一番驚いたのは、日本との大学院に対する考え方の違いでした。日本では大学院といえば、学部でみつけた専門分野に対する知識をより深化させ、研究者としての第一歩を歩み出すという認識が強いと思います。そのため大学院に進学する人は就職と天秤にかけ、高い意識をもって入る人が多いと思います。大学院のカリキュラムも必修はほとんどなく、指導教員の下、研究に勤しむイメージが強いです。しかし、フランスでは学部は三年で大学院はゼミや専門学校を選ぶ感覚に近いものがあります。ほとんどの人は修士まで進みますし、研究成果をあげ論文を書くというよりは自分の将来の進みたい分野に必要な知識、スキルを習得する意識が高いです。そのため授業はすべて必修(選択の余地はほとんどありません)であり、その必修もマクロ経済学から法学まで幅広く、公共経済学の実務に必要な事柄が中心になっています。

また日本と大きく違うのは、三期制になっていて三期目がインターンになっていることです。これは必須で全員が仕事をみつけ、夏まで仕事をし、それをプロジェクトとしてまとめて指導教員に発表します。クラスメイトは各々政府系のインターンとしてアフリカや諸外国で働いたり、民間会社で自分の学んだことを応用したり、大学で先生のもとで研究したり様々です。私は奨学金の関係でパリにおいて運用会社で数理モデルを開発したり、利用して株やポートフォリオの分析をしたりしています。これにより今まで学んだことを応用したり、また研究題材を発見したりすることもできますし、なにより実務に必要な知識とスキルを身につけることができます。私としては、この経験は実利実学の観点から非常に有益に感じています。

フランスにきて9ヶ月経ち、日本に帰る準備を考える頃になってしまいましたが、この一年弱で言語、文化、教育、どの面でも非常に成長することができたと感じています。様々な国を訪れたり、フランス人やその他の国の友達を作ったり、また仕事を通して同僚と意見を交換し、議論を重ねた中で、日本や米国にいては気がつかなかった観点やものの考え方が見えてきました。まだまだ学ぶことは多いですが、この一年で経験したことは自分にとって大きな意味がありましたし、今後とも邁進していきたいと思います。(2011年5月)

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