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教員インタビュー
呉 茂松 写真1

専任講師 呉 茂松
政治学 現代中国論
現代中国における維権
(権利擁護)運動

「正解」より「問題」を探すこと、そして「問い」続けること

研究テーマとその出会い

改革開放政策が中国にもたらしたのは富だけではありません。人々の権利への目覚めも、その必然的な産物であります。私の研究テーマは、人々の権利に対する意識と行動の変化が、中国政治社会にもたらす影響であります。とりわけ権利の擁護を意味する「維権(中国語『維擁権利』の略語)」行為とその言説について考察を加えてきました。

私が「維権」という単語を初めて目にしたのは、学部三年次に、『南方週末』という新聞を読んだときであります。インターネットが市民の生活に定着していない当時、果敢な批判と進歩的な議論を展開していた『南方週末』は鶏群の一鶴のような存在で、その新聞を読むことが大学生の間で流行っていました。同時代を生きる当事者として、人々の権利意識の変化を、肌で感じていた私が、この言葉を目にした瞬間、意識だけではなく、行動へと展開する潜在性を感じました。以後、争点の拡大とともに広がりを見せるこの言葉を追い、関連事例を探し、その影響と意義を分析する作業が、卒業論文、修士論文、博士論文につながり、現在も続いております。大学の時、同級生らと深夜まで重ねた議論の延長上に、いまの論考があると言って良いでしょう。

維権運動に関する分析を通して、中国政治社会のダイナミズムと、そこを生きる「民」たちの顔を自分の視点、思考、方法論で整理をしてみたいという動機が、私の研究を支えています。

研究テーマの魅力、面白さ

私にとって、「中国」は生まれ育った国でありながら、研究対象でもあります。私の中で、「中国」との距離、関係は複雑なものであります。いえば、当事者であるがゆえに親近感、期待するがゆえに憂い、冷徹に分析するがゆえに生まれる緊張関係……このような、研究対象との複雑な付き合い方に、私は研究の面白さを感じています。

学生へのメッセージ

私が政治学を学ぶ出発点は「一つの国家、一つの民族に束縛されない、一人の人間、『民』に立脚した平和的価値の実現について考える」ことにあります。これは朝鮮半島に民族的ルーツを持ち、中国で生まれ育ち、いまは日本を生きる舞台としている経歴と直接関連があります。常に考える問題には「個の独立」、「権利と権力の関係」、「マジョリティーとマイノリティーの共生」などがあります。

私は大学教育の意義は、教養と専門知識、応用能力の伝授以外に、学生が「他者」を認識することを以って「自我」を知り、そのプロセスを通じて、多元的かつ重層的な価値観を樹立すると同時に、自ら考える姿勢を身に付けることにあると思います。一人ひとりの思考が平和を守る力であり、未来を創造する源であります。想像力の豊かな皆さんとともに様々な「問題」を発見し、議論していきたいと思います。

(2017年1月取材)

プロフィール

呉 茂松 写真2

1999年

中国・東北師範大学政法学院 卒業

2001年

早稲田大学大学院政治学研究科 科目等履修生 修了

2004年

慶應義塾大学大学院法学研究科 博士前期課程 修了

2009年

慶應義塾大学大学院法学研究科 博士後期課程単位取得退学

2013年

Ph.D 法学学位 取得
東京大学、東海大学、早稲田大学などの非常勤講師、慶應義塾大学法学部専任講師(有期)を経て、2016年4月より現職

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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