教員・学生の声

コーディネーターからのメッセージ

学生たちの無限の可能性を実感

嘉治佐保子
慶應義塾大学経済学部教授/PCP Co-ordinator

日本にとって緊急の課題の一つは、国際社会において、日本国内におけるのと全く同じように平常心をもって振る舞い、活躍することのできる日本人を育てることです。

日本人は、総じて、教育水準が高く、勤勉を尊重する誠意ある国民です。ところが、そのような日本人の「良さ」は、外国人に接するときには十分に発揮されない場合が多いようです。これは残念なことです。しかし21世紀の国際社会における日本の立場を考えると、「残念」なだけではすみません。これまで、日本の経済力は世界の一・二を争う水準にあり、日本はG8等「欧米先進国」と同じグループに属する唯一のアジアの国でした。しかし既に、日本の経済力・人口は相対的に低下しつつあり、日本以外のアジアの国の影響力が急速に高まりつつあります。

このような状況下で、世界中の人々が、なお日本人に「一目を置く」としたら、その理由は何でしょうか。答えは、質の高い人材にあります。日本には天然資源がほとんどありません。あるのは人材だけです。「日本人とは仕事がしやすい。」「日本人は相手の立場をよく理解したうえで自分の考えを説明してくれる。」「日本人は信頼できる。」「日本人が提供するサービスと財は質が高い。」「日本人は日本の伝統と文化を体現していて魅力的だ。」世界の人々にそう言ってもらえれば、日本の経済力・影響力が相対的に低下しても、日本人は無視できない存在であり続けるでしょう。

実は、「相手の立場を考える」「信頼できる」「質が高い」等は、日本人が日本人同士で接するときに重視する特徴です。これが、外国人に接するときに日本人同士で接するときと比べて自然に出てこない理由の一つは、「外国語恐怖症」とさえ呼べる、語学力の問題でしょう。しかしそれだけではありません。日本人は、慣れ親しんだものと少しでも違うものに遭遇すると、平常心をもって接することができない傾向があります。

このままでは、日本人は誤解される可能性が高くなり、21世紀の国際社会における日本の立場は弱くなりかねません。また、多くの日本人がしたいと望んでいる「国際貢献」も、十分にできません。この問題に対処する方法の一つが、国際社会において、日本国内におけるのと全く同じように平常心をもって振る舞い、活躍することのできる日本人を育てることなのです。

そのためには、言うまでもなく語学能力を上げる必要があります。しかしそれだけでは不十分です。自分と違う環境に育ち、自分と違う価値観を持った人々の言うことを正確に理解し、そのうえで自分の考えを相手に的確に伝える能力を、養う必要があります。残された時間は、あまり多くありません。

PCPでは、学生の英語能力が上がることだけでは満足しません。英語を使って、相手と効果的に対話する能力を向上させることを目指しています。つまり、英語ができることを前提として、相手の言うことを自分の思考回路の中に取り入れ、そのうえで自分の立場や考えを相手にわかるように伝える能力です。そのためには抽象化する能力が必要であり、学生はこれを経済理論を学ぶことで鍛えます。

PCPの学生がPCPについて語るとき必ず出てくるのが、「意識の高い仲間」という言葉です。いわゆる「帰国生」でも、子供のときに覚えた英語と、経済学を学び論ずる英語は違うものです。ましてや「帰国生」ではない学生にとって、すべて英語で教育を受けるのは容易なことではありません。それでも学生たちは、臆せず、高ぶらず、懸命に自分を磨いています。それと同時に、良い仲間とともに学生生活を楽しむことも忘れていません。そんな彼らの成長過程に真剣にかかわることができるのは、教師として大変恵まれたことだと思います。無限の可能性を秘めた彼らが将来どんな活躍を見せてくれるのか、「幸多かれ」と切に願いながら期待しています。
 

学生からのメッセージ・コメント

2014年度 PCP Certificate 授与式でのスピーチ

海谷環菜(2014年度卒業)

倉田采佳(2014年度卒業)

鈴木豪人(2014年度卒業)

岩田明久(2014年度卒業)

梶谷恵翼(2011年度卒業)

“ABF(*) was game changer for my career and my life”
If you have couple days to mingle in Korea with one of the top students from Yonsei university, what would you do? Eat Samgyupsal? Drink Makgeolli? That’s awesome idea (because I did that as well) but what about meeting Korean entrepreneurs and feel the vibe of Asian venture businesses? At the ABF, I met awesome entrepreneurs in Korea through this trip and as a result, I’m now working for a fast growing Korean startup called VCNC. So, you never know what’s gonna happen so stay PCP and stay global!

* The Asia Business Forum (ABF) is our summer studying session, organised by and for Asian university students. ABF’s goal is to promote deeper understanding of the Asian Economy, to establish connections between Asian universities and to provide networking opportunities among students. The first ABF was held at Yonsei University (Seoul, Korea) in 2009. Since then, students from participating universities have been taking turns hosting the event.

星浩之 (2010年度卒業)

入学当初は、何をしたいか漠然とした考えしかありませんでした。がらりと考え方が変わったのは2 年生の時。国際学生シンポジウムの運営委員になったのがきっかけです。「経済学を120 %楽しもう」とする姿勢にインスパイアされ、3 年時にPCP を選択することを決意しました。PCP の授業は、モチベーションの高い仲間と柔軟な考え方で国際経済を学ぶことができる場です。PCP で学ぶことで、海外や大学院での活躍など、将来の可能性が広がると考えています。

鈴木謙介(2009年度卒業)

大学入学時、一番の苦手科目が英語で海外経験も皆無だった私が、信じらない事に、社会人3年目の1年間をパナマで、そして4年目の今年はドイツで迎えています。勿論、今の日々の業務は英語で行っています。そして、このような恵まれた経験は、PCPでの2年間無しでは得られなかったものだと強く感じています。私がPCPで得たものは大きく2つあります。

まず、一つ目は『英語を使う自信』。
多くの人が英語を話す事が恥ずかしいと思った事があると思います。私もそうでした。でもそれは、「英語が話せない」からではなく、「英語を使う自信がない」からです。しかし、PCPでの2年間で留学生と一緒に英語で授業を受け、そしてHECへ半期の交換留学に派遣してもらった事で、英語を使う事への羞恥心は消え、自信をもって英語を話せるようになりました。

二つ目は、『沢山の刺激をくれる、意識の高い仲間』。
どんな努力家でも、自分一人で高いモチベーションを維持し、努力を続ける事は絶対にムリだと、私は思っています。そして、モチベーションが落ちそうな時にパワーをくれるのが、仲間だと思っています。PCPやHECで出会った仲間は、誰もが高い意識を持ち、日々努力を重ねています。そんな、仲間たちの頑張っている姿が、何にも勝るエネルギーを私にくれました。今でも、PCPの同期はとても仲が良く、定期的に情報交換をしていて、一生付き合っていく仲間なんだろうなと感じています。

阿部和彦 (2009年度卒業)

 英語が得意でなかった私がPCPに入って、何事にも挑戦する姿勢が身についたと思います。「厳しい環境に入って、世界に視野を広げてみたい」「環境・資源経済学を徹底的に学びたい」という気持ちでPCPに入りましたが、日本で生まれ育った私が英語で経済学を学び、英語で留学生と意思疎通することは決して容易ではありませんでした。しかし、素晴らしい仲間に恵まれたこともあって、困難を乗り越えるための意気込みと努力が失われることはありませんでした。PCPでこのような厳しい環境に身を置いたからこそ、卒業後、理系大学院に進学し、環境・資源について理工学的側面から学ぼうというモチベーションが生まれたと確信しています。現在、幸いにも私は自身が学んできたことを生かせる場所で働くことができていますが、PCPでの経験があったからこそ、仕事においても何事にも挑戦する姿勢が身についていると強く感じます。

向江広次 (2009年度卒業)

私がPCPで得たものは、以下の2つである。

  • 英語を使う「自信」
  • 「ライバル・仲間」との出会い

世界でProfessionalに活躍するには、「自分の意見を上手く伝え、相手の意図もしっかり汲み取る」能力を身に付けなければならない。留学生と英語でDiscussionしレポートを作成したPCPでの経験はその能力を身に付ける良い機会となり、英語を使う「自信」を獲得することが出来た。

PCPで得た経験のおかげで、社会人2年目から2年間ドイツ駐在を果たすことが出来た。現地では、マネージャーとして部下を数名抱えていたが、ここでもPCPで得た「自分の意見を上手く伝え、相手の意図もしっかり汲み取る」を発揮し、活気のあるグループを形成することができた。
現在もPCPの同期や先輩とも頻繁に飲みにいき、他業界の情報入手や仕事の相談に乗ってもらっている。卒業してからより恵まれた「仲間」に出会えたと実感している。

田中栄助(2009年度卒業)

私はフランスのHEC経営大学院というビジネススクールで約一年間の留学を経験しました。留学することの醍醐味は本当に多岐に渡り、その個人によっても得られるものは違うと思いますが、私が経験したことの中で特に印象に残ったのは、授業における各国の学生の「表現力」の違いでした。

欧米人が積極的に発言するといった話は本にも書いてありますし、人の体験談からも知っていたので、それを授業で目の当たりにして驚くことはありませんでしたが、それぞれが得意とする表現の仕方というものが国によって多かれ少なかれ存在するということは私にとって大きな発見でした。例えば、アメリカ人やカナダ人は意見を一つ求められたら、とにかく5でも10でもいいからたくさん意見を言ってその中で一つでも的をえた意見があれば良いというような「数打てば当たる」的な表現力を得意としていました。それに対し、フランス人やドイツ人などは、アメリカ人が作った議論の土台に、自分たちの意見を乗っけて批判や同調をしていくというスタイルを持っていると実感しました。それぞれが自分の得意とする表現の仕方を持っている中で、いかに日本人として自分の語学力の制限や今まで積み上げてきたディスカッション経験をもって発言していくかということは自分にとって大きな試練となりました。

結果としては、欧米人が積んできたディスカッションの教育、経験のレベルは、わずか一年で簡単に追いつけるものではないということを痛感しました。しかし、スポーツと一緒で、表現力というのも訓練し、経験を積む中で徐々に上手くなっていくということも改めて学ぶことができました。帰国した今だからこそ、PCPが「経済学の理論を知る」ということに終始せず、それと同じくらいに「自分で考えたことを表現する」教育に重点を置いている理由がわかりました。

根來恵梨 (2008年度卒業)

私は現在、日系の証券会社で働いていますが、PCPを卒業した後に衝撃を受けたのは、「世の中が追い付いていない。」ということです。在学時、グローバル人材の育成という理念に共鳴してPCPを履修したことは、基本的な英語のプレゼンテーションや経済学の理解という点で、私の能力を向上させることに大いに役立ちました。また、世界経済の動きをリアルに感じることができるという理由で、現在の株式マーケットの仕事を選びました。

実際に社会に出ると、日本人の多くが「中身はあるのに英語で表現できない」又は「英語はできるがそれを活用する立場にない」ことに気が付きました。また、海外から日本に働きに来る人も多い中で、3か国語を堪能に操る人や、ハングリー精神に富む人に会うと、「日本の固定観念に染まってはいけない」と強く感じます。

現在は、企業派遣のMBA留学を目指していて、国内外の両視点を持つグローバルな日本人として、活躍の場を広げたいと考えています。また、PCP卒業生が増えていくことで、世界で活躍する日本人ネットワークが拡大することも楽しみにしています。

岩間俊介(2008年度卒業)

僕は現在、オーストラリアのメルボルンにて、47カ国から集まった留学生が暮らす国際寮で留学生活をしています。留学生たちとの日々の生活を通じて、彼らの価値観、考え方、日常生活習慣、社会通念が徐々にわかってきました。

この留学は、僕の視野を大きく広げてくれました。しかしながら、日本人にとって、言語の壁と文化の違いからくる行き違いは、未だに大きな障害であるということも、改めて実感しました。三田会やOB訪問を通じて、メルボルンで海外駐在員として働く日本人ビジネスマンに20人以上会うことができたのですが、彼らは皆、「日本人は全員高い能力を持っているのに、国際的なフィールドになると、その力の10%から50%しか発揮できず、非常にもったいない。」と話していました。

将来、国際的な競争力を持った人間として活躍するためにも、PCPをその第一歩にしてほしいと思います。一人でも多くの人がこのプログラムに参加して、自分の視野と可能性を広げてくれることを、心より望みます。

参加学生からのコメント

Q. PCPに入ってよかったと思うことは何ですか? (経済学の勉強に関して)

A. 対話式の講義により、考える力がついた。2ndランゲージで経済学を学ぶことでより深い理解を得られた。/経済学の基礎を英語で学びなおせた。/専門的知識に触れられたことにより、様々なキャリアパスを考えるようになった。/英文を「量」で読む機会があったこと。/Business/academic writingを学べる。/論文を検索する際にも、英語の論文を扱えるようになった。/色んな先生との交流が密にできた。ゼミが1人の先生としか交流できないのに対して、PCPでは複数の先生と交流することができた。/とにかく自分で考えて意見を言いたいと思い続けてきた人には、それが躊躇することなくできるプログラム。/仲間のモチベーションが高い。向上心のある同期に出会えた。/自分で勉強のペースを作らなければいけない点。/興味深い授業を、少人数で受けることができる。/将来のキャリアについての問題意識を3年の最初から持つことができる。/英語を読むことが増え、リーディングの速度が上がった。とにかく英語に慣れられる。/否応なしに英語漬けにされること。しかも「目的」としての英語ではなく「手段」としての英語が機能していること。/高校生の時に思い描いていた理想の大学生活をようやく実現できている(徹底的に勉強していること)。/選択肢が広がる(海外で働くことを具体的に考えることができるようになる)。

Q. PCPを志望する日吉の学生がやっておいた方がよいと思うことは?

A. 経済学の基礎知識+幅広い応用分野に触れる。/計量経済学概論の履修。統計学の積極的な学習。/英語力をバランス良く伸ばすこと。TOEFLで230程度あれば良いと思う。/自主的に行動する力をつける。/体力をつける。ある意味英語力よりも重要。/3〜4年に変な授業を残さないように必修科目を取り終えること。PCPと同時はつらい。/毎日の勉強の習慣をつけること。/PCPで使うテキストを買って読んでみること。/将来像(本当にアメリカの大学院に行きたいのかetc.)の具体化。/経済学の教科書(英語で書かれたもの)を読んでおくと大変役立つ。記述の方法・用語などを事前に知っていると理解度がまるで違う。/数字の表現(口頭・筆記)・経済用語を身につける。/英語の読み物に慣れておく。英セミは特別上級をとる。/帰国生以外はlistening, speakingを特に(他のskillもだけど)。シャドーイングがおすすめ。

自由コメント

ゼミと並行して行うことはなんとか可能かもしれないが、両方からそれなりのものを得ようとするには大変な覚悟が必要である。熟慮の末決定していただきたい。/就職活動との両立については、厳しい部分があった。しかし実際には、先生方は考慮して下さっていたと思う。就活のためにPCPを諦めないでほしい。/根性でゼミとの両立・就職活動との両立をした。但し、その場合バイトなど他の活動は切り捨てる覚悟が必要。/就活では、PCPは注目をひく一つの話題になってよかった。ゼミ・就職活動との両立はやり方次第で十分可能。ただし、それなりの負荷がかかる。/Academicな進学を考えているならPCP以外での努力が必要だということを認識すべき。/勉強だけ、遊びだけ、バイトだけ、というように、偏った生活はやめた方が、効果的な学生生活(PCPにおいても)になる。/ゼミとの両立は大変だが、その分やりがいがある。いい意味で互いに刺激となっている。/とにかく底なしの情熱・意欲が必要。逆にそれさえあれば、大抵のことには対応できるはず。