東京都における手話通訳・要約筆記派遣事業に関する実態調査-需給バランスに関する支援者の非金銭的インセンティブの役割-
[自発展開型]
櫻井 大輔(経済学部4年)
指導教員:中野 泰志
2009年2月10日
要旨
手話通訳と要約筆記は、「聴覚障害者が対等平等に暮らしていくために必要不可欠な情報保障の手段」であり、障害者の権利条約が採択されたことで、今後、需要の増大が見込まれる。しかし、国内においては聴覚障害者の情報保障の体制が十分でなく、その構築に向けて、需給バランスという経済学的な視点やサービス提供者のインセンティブという心理学的な視点からの研究は少ない。本論文の目的は、手話通訳・要約筆記派遣事業の実態を、需給バランス及び支援者の活動のインセンティブの観点から明らかにすることである。
本研究では、聴覚障害者の情報保障体制が最も整っているとされる東京都をモデル地区とし、アンケート調査によって、手話通訳・要約筆記派遣事業の需給バランスの実態、事業の供給を支える支援者のインセンティブの内容を明らかにした。
その結果、東京都においてさえ手話通訳・要約筆記派遣事業の利用率が極めて少なく、供給側を支える支援者も質量ともに不足していることがわかった。また、現在の供給水準は、支援者の非金銭的インセンティブによって支えられていることがわかった。そして、今後の需要拡大を考えると、供給体制を整えることが急務であることが予測できた。