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HOME > 経済学部 > 研究プロジェクト > 活動記録・研究成果 > 2009年度 研究成果 > 中国メディアの変容

研究プロジェクト

中国メディアの変容

[誘導展開型]
高松亜也子(経済学部3年)
指導教員:村越貴代美

要旨

中国メディアは党の思想宣伝を優先するとよく言われるが、北京・上海・広州の新聞閲読率を調べたところ商業化への動きが加速していることがうかがえた。党が国民に知らせたいと思う情報のみを提供する思想宣伝と、国民が知りたいと思う情報を主に提供する商業化とは、相反する流れである可能性が大きい。商業化が進むなか、実際の報道内容はどのように変容しているかを考察した。具体的に調べるため、中国のニュース番組「新聞聯播」などを元に、特徴が異なる天安門事件、SARS、チベット騒乱を分析した。その結果、天安門事件では露骨な報道規制、SARS では一部で客観的で迅速な報道、チベット騒乱では一方的な報道が見られた。さらに、主な媒体にはテレビや新聞とともに、インターネットの台頭がめざましく、それに応じて規制も変容した。しかし、社会主義体制を維持するという党の方針はどの事件においても共通して見られ、そのための最優先事項が天安門事件では民主化の阻止、SARS では持続的な経済成長、チベット騒乱では民族問題の封じ込めであった。この違いから、報道内容は党の思想宣伝を「優先する」ことから「操作する」ことへ変わりつつあると同時に、事件ごとの報道内容の差は最優先事項の違いから生まれているため、中国メディアが党の思想宣伝を優先するという構図自体にあまり変化は見られないのではないかと分析した。中国メディアの今後に関しては、持続的な経済成長が続く限り、現在の状況が続くと思われる。中国は世界の生産・消費市場としてその存在感を増し、国際社会で果たすべき責任も求められるようになってきた。それを受け、西側諸国が中国側に言論の自由を強く求め、チベット騒乱では暴力的な方法を取ることもあった。しかし、経済的な駆け引きの中で言論の自由化に向けた動きへと導くことが、もっとも現実的な案ではないかという結論に至った。

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