駐日英国大使館 金融担当官
奥由香
経済学は、どんな仕事にも必要とされている。
経済学は、ものを見るひとつの見方。それを仕事にも繋げたい。
大使館の金融関連担当官をしています。英国の金融政策決定のために、日本の金融システムの現状や動向など日本の金融に関する情報を収集分析して、英 国に伝えるという仕事です。金融政策担当者やレギュレーターが何を見ているのかを理解して、必要な情報・分析を報告することや、メディアの報道の中でリー クされたりする情報が確かなものか検証したり、といったことをしています。大使館として、日本の政府と直接対話をして、ほかではとれない情報をいただいた りしています。
経済学部で学んだことは、常に仕事の場で使っていますね。経済学っていうのは、物を見るひとつの見方ですから。何か物事を論じる時、曖昧な感じではなく、 しっかりとした議論や数字に落としていくためには、経済というのは非常に重要な考え方ですね。理論と現実の乖離があるためになかなか難しいことですが、こ れからもできるだけ感覚に頼らず、経済学を活用できればいいなと思っています。
なんとなく、は通用しない。だから数字の裏付けが必要。
経済学部を選んだ理由は、同級生と比べて一風変わっているんじゃないかと思いますが、一番知らない分野だったからなんです。こんな風に言ったら怒られるかもしれませんが、選択の自由がある中でどうせやるなら、知らない、動きの激しそうなものをやってみようかなって。
印象に残る授業はいろいろありますね。英語に関しては、大学が私にとってのスタートになったと思います。英語をちゃんとネイティブスピーカーの先生に習っていく中で、英語で意思疎通ができることの面白さを実感したのが英語に興味を持ったきっかけでしたね。
ロンドンで経済を勉強する際に統計学が非常に役立ちましたが、 慶應で統計に興味を持っていなかったらロンドンで経済を勉強することにはならなかったでしょうし、マクロとミクロ経済学の基礎知識がなかったら多分勉強についていけなかったと思います。
統計学も印象深いです。経済学って結構難しいというか、予測などをする時に、人を論破するのがすごく難しいんです。「なんとなくそう思う」では説得力がな いんですよ。もちろんそういった感覚も必要ですが、統計学を活用して数字で分析すると、それをサポートするデータができたりして。そういった手法があるこ とを知ったというのが、すごく面白かったです。
他に印象に残っている授業に、国際経済があります。勉強というのは、歴史は歴史、理論は理論、現状は現状にどうしても分離しがちですよね。それが、一つの線に繋がったのが国際経済の授業だったんです。
その先の選択肢が多い。これが学部選びの方法。
私もそうでしたが、高校生の時点で「自分は将来何をやりたい」って、はっきり言える人は少ないと思います。大半の方が、曖昧な意識の中で学部選びを することになります。そうする、と変な選び方かもしれませんが、その先の選択肢が一番多そうな学部を選ぶというのも、ひとつの方法かなと思います。経済学 というのは、どんな仕事をするにしても必ず必要なものですから、非常に役立つのではないかと思いますよ。
それは、同級生を見ていても実感します。最初は金融業界に就職した同級生たちも、後に転職していろんな分野に散らばっていますが、それで分野を変えて苦労 したっていう話は聞かないんです。いろんなところで活用できて、かつ必要とされているのが経済学なんだなと、強く感じています。そんな経済学部の友人たち は、何か困ったことがあれば、すぐにメールで教えてくれます。今でも頼れるかけがえのない存在ですね。
(2005年5月16日取材)
※プロフィール・職名はインタビュー当時のものです。
プロフィール
1988年 |
慶應義塾大学経済学部卒業(財政理論専攻) |
1998年 |
LSE(London School of Economics and Political Science)、 |
1999年 |
同大学院 MSC in Economics 取得(金融政策論専攻) |
1988年 |
富士銀行入行 |
1993年 |
Credit Suisse First Boston 証券会社入社 |
1999年 |
JETRO London勤務 |
2001年 |
英国より帰国 |
2002年 |
駐日英国大使館 経済部 首席行政官(経済・金融規制担当) |