授業紹介:アジア経済史(ECONOMIC HISTORY OF ASIA)
専門教育科目|特殊科目(三田)・アジア経済史(ECONOMIC HISTORY OF ASIA)
アジア経済のダイナミズムを、歴史から考える
アジア経済と聞いて、皆さんは近年の急成長を思い浮かべますか? では、それより以前のアジア経済は未発達で、そのために先進国を中心とする世界経済に取り込まれ変質を余儀なくされていたのでしょうか。答えはノーです。歴史を学べば、帝国主義が浸透する以前には、そして帝国主義の時代でさえも、アジアの人々は主体的に力強い経済を展開していたことが分かります。
アジア経済史は、今まさに発展しつつある新しい研究分野です。近年まで、世界経済はヨーロッパにリードされてきたと考えられていました。アジア各地の経済はローカルなものと考えられ、世界経済の中で位置づける試みはなされなかったのです。ところが近年になってさまざまな数値資料が発掘され利用可能になると、アジアが歴史的にヨーロッパに比肩する経済の規模やシステムを持っていたことが分かってきました。
この授業では、そんな学問の最先端の動向を紹介しつつも、今までアジア経済をあまり体系的に学んだことのない学生のために、基礎から説明します。15世紀ごろからの東アジア、東南アジア、南アジアがヨーロッパなど他地域とどのような関係を築き、どのように独自の歴史展開を示したのか、それにはどのような要因が働いていたのかを講義します。これによって皆さんには、現代アジア経済の複雑なダイナミズムを、歴史的に深く考察してほしいと思います。授業は英語で行いますが、キーとなる語句やコンセプトはスライドで示して理解を助けます。また、図表だけでなく写真も多用して、さまざまな時代や地域のイメージをつかんでもらいます。
大学で学ぶ歴史は、暗記することではなく、考えることです。今目の前に見える事象は、なぜそのような特徴を持ち、それは歴史的にどのような意味を持つのでしょうのか。このような問題を考える筋道は多様にあり、答えも一つではありません。経済史という分野で必要なのは、歴史的展開に基づく論理的・合理的な説明です。この授業では、ぜひそのような考える力を鍛えてほしいと思っています。
(教授 太田 淳)