ベートーヴェンのピアノ・ソナタの解釈・分析の変遷および比較 ―A. シンドラー、C. チェルニー、A. B. マルクスを中心に―
[自発展開型]
谷口 みゆき (経済学部4年)
指導教員:石井 明
要旨
19世紀初期に書かれたベートーヴェンのピアノ・ソナタの解釈に関する文献資料は、今日では軽視される傾向がある。これは、論理的に弱い部分が多々存在す るほか、彼らの解釈が今日主流となっている科学的な音楽の構造分析とは、表面的に大きく異なっているためである。19世紀初期のシンドラー、チェルニー、 マルクスのアプローチおよび理解を個別に検証すると、動機に注目していたりテンポに注目していたりと、三者ともアプローチは異なるが、目指しているところ は同じであったことが分かる。三者とも、演奏という形で具現化することを念頭においており、ベートーヴェン作品の構造を明らかにしようとしていた。その 後、彼らの理解は、形式美学の論理を証明するのにベートーヴェン音楽が引き合いに出される形で、19世紀初期のベートーヴェンのピアノ・ソナタの解釈が利 用された。三者の理解は、このような間接的な形で、今日のドイツ音楽文化の形成に貢献したのである。