キング牧師の日設置にみる、公民権運動の歴史的意義の変遷
[誘導展開型]
内田 遼(経済学部3年)
指導教員:ボールハチェット, ヘレン
2008年2月29日
要旨
本論文は、アメリカ合衆国における法定休日の一つ「キング牧師の日」を取り上げ、これが設置された背景・経緯に焦点をあてることにより、キング牧師が率いた公民権運動の歴史的意義がどのように変化していったのかを論ずる。一般的にキング牧師の日は、彼の「公民権運動のリーダー」としての意義にもとづいて設立された側面がある。その一方で「労働組合運動のヒーロー」としての認識にもとづいて設立された側面もある。しかしロビー活動の末期で、労働組合層のコミットメントがほぼ消失し、前者の意義のみが強調されるに至った。さらに1990年代においてはどちらの側面も米国民の認識から薄れつつあり、このことから結論として、公民権運動の歴史的意義は、米国民の意識からは薄れたと考えられる。ただし補足として、21世紀初頭の米国政治にも焦点をあて、こののち公民権運動とキング牧師が、どのような歴史的意義を持ちうるのかについても、考察する。