イノシシによる農業被害に生息密度依存性はあるか
[誘導展開型]
遠藤 久美子(経済学部3年)
指導教員:河田 幸視
2008年2月29日
要旨
本稿の目的は、ニホンイノシシによる農業被害の生息密度依存性を明らかにすることである。その為に全国の各県における特定鳥獣保護管理計画の捕獲による有害駆除の効果(農業被害軽減)の分析による検証と、兵庫県篠山市における実地調査、結果分析を行った。各県の分析では捕獲数と農業被害金額、推定生息数と農業被害金額の相関係数をそれぞれ算出し、イノシシの農業被害の生息密度依存性の低さを指摘した。実地調査においてはより正確で細かい分析によって被害の密度生息度依存性について検証を行った。そこでは生息動向を示す一定の療法である箱ワナによる捕獲数と、ワナ設置場所からイノシシの行動圏に存在する集落ごとの農業被害程度の申告を計上したものの相関係数を算出した。同時に出没程度と農業被害程度の相関についても分析を行った。以上の分析から、イノシシの農業被害には生息密度依存性が必ずしも認められないが、出没が多ければ農業被害が高くなるという関係が認められた。こうしたことが起きる理由の一つとして、イノシシには農作物に執着が強い個体と弱い個体が存在することが考えられた。