おコメの国の『食道楽』-明治期における食物科学の成立と食養小説-
[誘導展開型]
中島 雄一(文学部4年)
指導教員:鈴木 晃仁
2009年1月19日
要旨
明治期における西洋近代的文化の受容において、食に対する考え方も変容した。
本稿は、栄養学と消費社会との二つの側面から、その変化を捉えようと試みるものである。栄養学の観点からは、森林太郎の分析的手法によって、「日本食」の捉え方が変化し、「ごはんを主食とし、そこに副食であるおかずが加わる」という定義が生れたことを論じた。消費社会の観点からは、村井弦斎著『食道楽』において、女性が「主婦」として消費社会に中に組み込まれることで、みずから近代化に参加する姿勢を得たことを指摘した。
以上二つの視点から、明治期の「日本食」のありようを概観し、国家による「日本食」の再構成が、民衆による食の「近代化」を促進させるものであると同時に、国家においても食物の選択可能性を付与し、より効率的な「近代化」を達成したとするものである。