風呂文化の形成について-日本とヨーロッパの比較を通して-
[自発展開型]
藤井 ちえみ(商学部3年)
指導教員:伊藤 行雄
2008年2月25日
要旨
風呂は現在の日本人の生活には欠かせない文化であり、他国と比較してもその風呂文化は特殊である。なぜそのような風呂文化が形成されたのだろうか。そこには何か特別な歴史的背景が存在するのであろうか。
第一章では宗教、湯治、銭湯の観点から、日本人と沐浴の関係に言及する。第二章では、比較対象としてヨーロッパの入浴文化の変遷をあげ、清潔観が時代や場所によって異なることをあきらかにする。第三章では日本人の清潔観が政府の啓蒙により広がり、内湯が備え付けられるようになり、現代においてはすでに衛生は当たり前のものとしてとらえられ、さらなる付加価値が求められていることを述べる。
本稿はこの三つの章を通じて、現代の日本における日本人と風呂の関係について明らかにしていく。一連の考察からもともと日本では湯に親しむ素地があり、それにヨーロッパの衛生学の概念をとりこんだことで、日本の独自の風呂との関係が深まり、さらに衛生以上の価値、すなわち「楽しめる」空間を風呂に求めているという結論に至った。