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教員インタビュー
壽里 竜 写真1

教授 壽里 竜
社会思想史

経済学以外にも眼を向けつつ、モラル・フィロソフィーとしての経済学を見つめ直す

研究テーマとその出会い

学部生時代には、あまり現代経済学に関心が持てず、むしろ哲学に興味を持ちました。また、学部の授業で経済学史を学んだことで、経済学の成立期(18世紀後半)にも興味を抱くようになりました。今では経済学の父と言われているアダム・スミスは、実はスコットランドのグラスゴー大学のモラル・フィロソフィーの教授だったのです。モラル・フィロソフィーは、日本語では「道徳哲学」と訳されますが、いまの自然科学に当たるナチュラル・フィロソフィーとの対比で言えば、社会科学に相当します。とはいえ、「モラル」というのは、もともと自然に対する人為(人の為すこと)を意味しますから、人文科学の領域も含んでいました。実際、スミスは『道徳感情論』という、今でいう倫理学の著作から、哲学史や言語論に関する著作まで残しています。誤解を恐れずに言えば、この学問的な「猥雑さ」こそが、私がこの時代に関心をもった最大の理由です。こうして、経済だけでなく、哲学・道徳・法・政治など、多様な領域にまたがって思想家たちの考えを明らかにする社会思想史という学問を志すようになりました。

研究テーマの魅力、面白さ

私が主に研究対象としているのは、アダム・スミスの親友だったデイヴィッド・ヒュームという人物です。日本では知名度がイマイチですが、政治思想では社会契約論の批判者としても知られていますし、哲学ではカントを「独断のまどろみ」から目覚めさせた哲学者としても重要です。『イングランド史』という大部の歴史書も残しています。さらにヒュームには『政治論集』(1752年刊)という著作があり、その中で経済学的な議論もしています。ただ、やはり私の関心は、経済学とそれ以外の領域との関連にあります。たとえば、ヒュームも関わった当時の奢侈論争(ぜいたくは許されるべきか)などは、経済学の成立を知る上で重要なだけでなく、当時の政治や道徳にも深く関わっており、さらには現代にも通じるテーマと言えるでしょう。一見すると経済学とはまったく関係のなさそうなことについても研究していますが、経済学を生み出した近代西欧社会とはいかなる時代か、ということが私の根底にある研究テーマです。

学生へのメッセージ

私自身が経済学部にいながら経済学にあまり関心がもてなかった学生だったので、学生の皆さんには、社会思想史という学問を通じて、経済学がそれ以外の領域と接する場面から、逆に経済学の面白さを伝えられればと思っています。また、学部生時代には社会の諸問題にそれほど強い関心が持てなかったのですが、過去の思想家の考えを学ぶことで、今という時代を生きる自分と社会とのつながりが見えてきた、という側面もあります。学問であれ、スポーツであれ、何を通じてでも構わないので、自分の関心・興味のおもむくままに、それを突き詰めていってもらいたいと思います。

(2017年12月取材)

プロフィール

壽里 竜 写真2

1995年

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業

1997年

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程

2000年

慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学

2004年

同研究科より博士号(経済学)取得

関西大学経済学部教授を経て2017年より現職

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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