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教員インタビュー
中村 慎助 写真1

教授 中村 慎助
ミクロ経済学

経済学部での教員生活の思い出

経済学部での教員生活の思い出について

定年退職にあたり、教員生活を思い出すよう学部よりご依頼をいただきました。

私の本格的な授業は1990年に助教授(現在の准教授)に昇格して日吉設置のミクロ経済学初級(当時は経済原論)を担当してからです。以来、30年ほど担当してきた計算になります。その中で最も衝撃的な思い出は、鳥居泰彦元塾長がまだ経済学部長でいらした時代に遡ります。当時、経済学部の入試改革の結果、旧来の入試方式(A方式)に、受験科目に数学がない入試方式(B方式)が加わりました。お陰様でB方式の人気は高く偏差値的には日本の大学の中でもトップレベルとなり、倍率も高いものでした。その学生たちを教えて1年目でしたか、2年目でしたかの最初の授業で「予算制約式」の説明をしましたが、数式の前に数値例として典型的な「リンゴが1個100円を5個、みかんは1個50円で10個買った時の支出は?」という話から始めました。その日のうちにベクトルの内積による表現まで進めるのです。授業の後何人かの学生が前に来て、「先生、私たちはB方式で入学したので、数学をやっていません。数字を使うのはやめてください。」と言われました。私としては「経済学は、あまりに難しい数式は使わなくてもすますこともできるかもしれませんが、数字は使うでしょう。」と思い、拙いながらも説明しましたが、学生たちはいわゆる受験エリートでしたので本当に驚きました。もちろん私の授業が未熟だったせいも大きかったと思いますし、B方式入学者のほとんどはしっかりと数学を学んでおり、このような学生は少数であったことも確かだと思います。その後、数学の先生方を中心に多くの先生方のご尽力をいただき、また経済学部の授業内容が浸透するに従い、そのようなことは無くなりましたが、この経験はその後の授業を考える上で重要なものとなりました。

私の教員生活の後半は自分の授業に加えて経済学部のカリキュラムを考えるようになりました。細田衛士名誉教授が学部長でいらした時に私はカリキュラム改革の責任者として、PCP (Professional Career Programme) と研究プロジェクトを提案し、従来の「研究会(ゼミナール)」を加えていわゆる三田少人数科目の3本柱となりました。PCP は、専門科目の中にいくつかの専攻を作って、全て英語で教えるコース、研究プロジェクトは経済学に拘らず広く語学や総合教育を含めて学生と教員の興味がマッチすれば成立する自由度の高いものでした。これらに共通するものは全て最後に学生が成果を論文として書くことでした。これらには経済学部の多くの先生方にご尽力をいただき、今も続いていることは大変嬉しく思っています。私自身が学部長になってからは、秋入学、秋卒業、4年間全て英語で教えるPEARL (Programme in Economics for Alliances, Research and Leadership) が創設されました。これによって義塾経済学部は世界の大学の中で評価され競争していく基盤ができたと思っています。また、経済研究所が設置され、研究だけでなく、研究所を通じて多くの寄付講座が設置されるようになりました。学生は大学教員だけでなく実社会からの情報も得ることができるようになりました。いずれも多くの先生方の多大なご努力の果実であったことは論を待ちません。これらのカリキュラム改革の中で、私の頭の中にあったのは若かった時の学生たちの言葉でした。それに応えるためには、学生たちが経済学部のカリキュラムの意図をできるだけ理解し、興味を持って長所を伸ばしていけるようにすることでした。

その後、現在常任理事の池田幸弘前学部長、駒形哲哉現学部長の下、DEEP (Data-driven Economics and Econometrics Programme)、FACTS (Fieldwork for Active Comprehension of Targeted Subject) が開始され、学生は興味のあるアプローチと分野を選んで研究を進められるようになりました。私の教員人生が、常に優秀な学生と意欲あふれる同僚たちに囲まれて送ることができたことに感謝をいたします。今後の義塾経済学部の一層の発展を祈念いたします。

プロフィール

中村 慎助 写真2

1981年

慶應義塾大学経済学部卒業

1983

同大学大学院経済学研究科修士課程修了

1989

米国ミネソタ大学 Ph.D.

1983

経済学部助手、その後、助教授を経て1997年より現職

2009年~2015年、
2017年~2019年

大学院経済学研究科委員長

2011年~2017年

経済学部長

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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