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教員インタビュー
ガボリオ マリ 写真1

教授 ガボリオ マリ
地域社会(日本村落社会)、明治時代の写真、フランス語教授法、日仏比較文化論

大学で過ごした日々の思い出・感謝の気持ちを込めて

経済学部での教員生活の思い出について

慶應義塾大学経済学部で送った26年間の教員生活を振り返ると、あっという間に過ぎてしまったという感じがします。過ぎ去った年月のたくさんの思い出を語るのはなかなか難しく、一言では言い尽くせません。ただ間違いなく言えるのは義塾で教えることができ、大変幸せだったということです。経済学部の第二外国語のクラスは、一年次に週3回の授業を必ず履修するので、言語を学ぶだけではなく、友人に出会い、大学の居場所のひとつをつくるという、学生にとって恵まれた環境であると思います。未習・既習のクラスの学生に、さらに、パリ政治学院ル・アーブル校への留学を控えた、ダブルディグリープログラムに在籍する学生に、長年にわたってフランス語を教えられたことは、大きな喜びでありました。またフランス語圏への留学を希望する学生や、DELF・仏検などのフランス語検定試験を受験する学生のお手伝いができたことも嬉しく思っています。また、最近では、義塾の全ての学生が受講できる「自由研究セミナー」を担当し、学生が各自で選んだ研究テーマに熱心に取り組み、プレゼンテーション・レポートを通じ、その成果を見事にまとめる姿に接し、大変やりがいを感じました。どんな授業でもいつも学生に教えられ、また元気をいただきました。私にとって、それは、かけがえのない貴重な財産です。義塾の自由な気風のなか、教育と研究を続けられたことを、大変感謝しております。またいつもあたたかく支えてくださった教職員の皆様と一緒に過ごした時間は、これからも私にとって非常に貴重な財産であり続けることでしょう。

また義塾に着任してから、自分にとってとても大切な場所と言えば、図書館、特に三田の図書館でした。 図書館カードを受け取って入館できるようになるとすぐにそこに行き、地下にワクワクしながら降り、誰もが手に取れる形で、貴重な書物たちが書棚で読者を待っているのを初めて見た時、感激したことをよく覚えています。また特に最初は道に迷って出口が見つけられなかった旧図書館の雰囲気も印象的でした。 大学に勤めてから木曜日に三田で授業を担当していましたので、ほぼ毎週、木曜日の午後に図書館に行き、教員が利用できる4階の小さな研究個室(キュービクル)で仕事をしていました。今、考えてみると、大変貴重な場所で、ランプの置かれた大きな机がある、この落ち着いた空間が好きでした。

山形県庄内地方の地域社会、特に村落社会を研究している私にとって、図書館にこの地域に関する本や資料がそろっていたことも、恵まれた環境だったと思います。また初代図書館館長であった社会学の田中一貞先生が、私が研究でフィールドワークをおこなう鶴岡のご出身であったこと、フランスに留学されていたことを知った時、驚くとともにご縁を感じました。

図書館の多くの本との出会いのなかでも、2005年に慶應義塾大学の三田メディアセンターが主催した「古写真で見る幕末・明治初期」展で、『The rice in Japan』(高木庭次郎, 1913)という本が展示されており、開かれていた頁で、当時の農村風景の写真を偶然目にし、興味深く思い、それがきっかけで明治時代の写真に関心を寄せるようになりました。その後、研究対象である庄内地方で、写真がどのように普及していったのか、また明治時代のこの地域がどのように写真におさめられていたのかに興味を持ち、現地調査を行い、論文にまとめました。

義塾の図書館は日本でも有数の大学図書館であり、学生たちがこのような素晴らしい図書館を利用できることの幸運に気づき、そこで自分の世界をひろげてくれるような様々な本と出会えることを心から願っています。 またコロナ禍の影響により、この二年間ですっかり変わってしまった日吉キャンパスですが、それでもキャンパスを囲む自然は豊かなままです。一日も早く、以前のように学生の笑顔があふれるにぎやかな場所に、人と出会える場所に、戻ってほしいと願うばかりです。

(2022年1月取材)

プロフィール

ガボリオ マリ 写真2

1978年

フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)日本語学科卒業

1980

同修士課程修了

1981

フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)、現代日本研究センター、D.E.A(Diplôme d’études approfondies) 取得

1986

東北大学教育学部大学院博士後期課程満期退学(日本政府給費生)

1989年

浦和明の星女子短期大学仏語科専任講師

1996年

慶應義塾大学経済学部助教授を経て2005年より現職

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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