准教授
松沢 裕作
日本社会史
日常の断片から普遍的な問いへ。確実に変化していく社会の有様を、歴史的にとらえるために。
研究テーマとその出会い
江戸時代から明治時代にかけての農村社会の研究をしています。
もともと歴史に興味はありましたが、大学に入ったころは必ずしも歴史をやると決めていたわけではありませんでした。むしろそのころは思想とか哲学とか、抽象的な思考に関心が向いていました。そのころ、安丸良夫さんという歴史家の著作を読んだのが、最終的に歴史学を専攻したきっかけです。安丸さんの研究は「民衆思想史」と呼ばれる潮流に属するものですが、江戸時代から明治時代の民衆の生活という具体的な場面から、普遍的で広がりのある問題を抉り出してくるところに面白さを感じました。
研究テーマの魅力、面白さ
歴史の研究のためには「史料」を読まなくてはなりません。「史料」というのは、研究対象となる時代の人々が書き残した書類だったり手紙だったり帳簿だったりするわけですが、そういうものを読んでいきなり「ああ面白い」ということは実はあまりなくて、最初はとりあえずひたすら読んだり書き写したりします。そのうちじわじわとつながりがみえてきて、そのつながりについて考え続けていくと、それが別の意外な事実や論点と結びついたりします。史料に書き残されているのは、なんということのない些細な日常の断片なのですが、それがもっと広い問題に結びついている、それを知ることで、自分自身の日常を見る目も変わってくる。そのあたりに面白さがあるように思います。
学生へのメッセージ
歴史を勉強してみるとわかるのは、そんなに人間自体が変わるとも思えないのだけれども、しかしその人間が作り出す社会の仕組みというのはたしかに変わっていくということです。経済学部でみなさんが学ぶ現代の社会科学というものは、目の前にある社会を解剖するための鋭利な刃物ですが、それでなんでも切れるかというとそういうわけにはいかない。大学で学ぶことの一つの意味は、「目の前の問題をいま解決しろ」という圧力から自由になって、「目の前にはないけれども考える価値のある問い」について考える機会を提供してくれることだと思います。そうしたチャンスを生かしてもらえればと思っています。
プロフィール
1999年 |
東京大学文学部卒業 |
2002年 |
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中途退学 |
東京大学史料編纂所助教、 専修大学経済学部准教授を経て、2014年より現職 |