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教員インタビュー
福山 欣司 写真1

教授 福山 欣司
爬虫両生類学、動物生態学、保全生態学

日吉の森で塾生を繋ぐ

経済学部での教員生活の思い出について

日吉キャンパスで総合教育科目として開講されている物理学、化学、生物学の3つの自然科学科目では、講義だけでなく実験も行います。私は1987年に生物学の実験担当の助手として採用され、助教授に昇格した1995年以降は、実験に加えて講義も担当してきました。昔から文系学生が自然科学を学ぶことの重要性は強調されてきましたが、実験まで取り入れている大学はほとんどありません。慶應義塾大学では戦後間もなく実験付き自然科学が始まり、もう70年以上続いています。この授業は学外でも高く評価され、平成17年度には文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」にも選ばれました。私たち実験付き自然科学担当教員の取り組みは、自然科学研究教育センターのホームページにまとめられていますので、興味のある方は、是非、ご参照下さい。

さて、実は、私の慶應義塾での思い出の大半は生物学ではなく、別のところにあります。それは日吉キャンパスに広がる大きな森(日吉の森)に係わる取り組みです。

日吉駅からイチョウ並木のなだらかな坂を登っていくと、正面に日吉記念館がそびえています。日吉キャンパスを初めて訪れる人は、この建物が終点だと思うかも知れません。しかし、日吉記念館はキャンパスの途中に過ぎず、その向こう側には、マムシ谷と呼ばれる谷を取り囲む10ha近い大きな森が広がっています。ここが日吉の森です。日吉の森は、昭和初期まで、農家が管理する雑木林でしたが、慶應義塾のキャンパスになった後も大きく破壊されることなく残されてきました。私たちの生物調査で、日吉の森には絶滅危惧種を含む1276種の動植物が確認されています。その多くは昔から里山に生息していた生物です。日吉の森は日本の原風景ともいわれる里山の自然が残る貴重な森なのです。

この素晴らしい森を慶應義塾の教育に生かしたいとの思いから、様々な取り組みを進めてきました。幸いなことに、経済学部には自由研究セミナーという少人数教育を目的とした科目が設置されており、その科目を担当することで、学生たちと自然観察や雑木林の管理を体験する授業を行うことができました。ちなみに、自由研究セミナーの授業内容は担当者に一任されており、まさに自由です。どの自由研究セミナーもユニークで興味深い物ばかりですので、経済学部生には履修をお勧めしたいと思います。

日吉の森を、大学だけでなく、一貫校でも使って貰えないだろうかと考えていた時、まさに渡りに船のように、普通部から日吉キャンパスの自然を使った授業をして欲しいとの依頼が届き、日吉の森で普通部生が自然を学ぶ授業が始まりました。動植物を観察したり、小さな田んぼを作ったり、クヌギやコナラの苗木を植えたり、日吉の森を満喫できる授業です。もう20年以上続いています。最初の頃に植えた苗木は、今では10メートルを超える高さに成長しました。2014年からは塾高でも生物の授業の中で、日吉の森の紹介と植樹体験をする特別授業をさせていただけるようになりました。最初の植樹から10年が経ち、植樹場所は、塾高の森と呼ばれるようになっています。

日吉の森の授業は、経済学部で生物学を担当する3人の同僚といっしょに行ってきました。また、一貫校の先生たちのご理解とご協力がなければ実現できませんでした。日吉の森の授業に係わっていただいた皆様に改めてお礼申し上げます。日吉の森は慶應義塾の大切な教育インフラです。これからも全塾生の学びの場所として活用されることを願っています。

プロフィール

福山 欣司 写真2

1987年

東京都立大学大学院理学研究科修士課程 修了

1987年

慶應義塾大学経済学部助手

1992年

博士(理学)東京都立大学

1995年

慶應義塾大学経済学部助教授

2007年

慶應義塾大学経済学部准教授

2012年

慶應義塾大学経済学部教授

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