准教授
菅野 智博
中国近現代史、東アジア近現代史
得た知識や経験から自分で判断・解釈する力を養おう
研究テーマとその出会い
私は高校まで、暗記科目のイメージが強い「歴史」の授業に対し、強い苦手意識を持っていました。大学入学後、専門分野としての「歴史学」と出会うことによって、必要なのは暗記ではなく多様な史料を用いて様々な角度から歴史上の事象や時代を解釈・構築することであると知り、それが「歴史学」の研究を志すきっかけとなりました。
私は「満洲」と称されていた中国東北地方を中心に、中国近現代史や東アジア近現代史について研究しています。近代以降の「満洲」は、多様な面にわたって日本、朝鮮半島、ロシア、モンゴル、欧米などの影響を受けつつ、複雑な内外情勢の中で大きく変化した地域です。大学3年生の時、かつて日本がアジアの諸地域で様々な分野にわたる現地調査を実施していたということを知りました。そこから、なぜ日本がそれらの地域で調査を展開したのか、残された膨大な調査報告書からはどのような現地社会像が浮かび上がるのか、そしてその地域社会がその後どのように変容していったのかなど、数多くの疑問が湧いてきました。これらの疑問が、私の卒業論文、修士論文、博士論文へとつながることになります。
そして、大学院の博士後期課程に進んだ頃から、満洲引揚者の関連史資料収集や聞き取り調査も開始しました。引揚者の方々と交流していく過程の中で、彼らは満洲経験をいかに記憶し、どのように語り、語った内容の背景には何が存在するのか、などの点も興味を持つようになり、現在は日本人の満洲「記憶」についても研究しています。
研究テーマの魅力、面白さ
研究を進める過程では、しばしば現地に赴いて景観観察や関係者への聞き取り調査を行ってきました。日本国内でも積極的にインタビュー調査を実施しています。これらの調査を通して、文献史料から十分に理解できない一面を知ることができます。さらに、そこからもう一度史料を読み直すことで、また新たな疑問や視角が生まれることも面白いです。
学生へのメッセージ
現在の日本では、「中国脅威論」を強調する様々な情報が日々飛び交っています。そのため、中国に対して「負のイメージ」を抱いている学生も多いと思います。一方で、漢字や中華料理などに代表されるように、古くから日中の文化交流は続いています。最近でも、中国発祥のソーシャル動画アプリやオンラインゲームなどが日本でも流行し、どこか中国に対して「親近感」を抱いている側面もあるでしょう。中国は日本にとって最も身近な国であり続けてきた歴史があり、今後も間違いなく重要な隣国であり続けます。学生の皆さんには、様々な情報に翻弄されることなく、自らの得た知識や考え、経験をもとに複雑かつ多様な中国を理解してほしいです。
(2022年1月取材)
プロフィール
2011年 |
宇都宮大学国際学部卒業 |
2013 |
一橋大学大学院社会学研究科修士課程 修了 |
2018 |
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程 修了 |
日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学非常勤講師、中山大学歴史学系(珠海)副教授などを経て2021年より現職 |
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※プロフィール・職位は取材当時のものです |