教授
石井 太
人口学
人口減少・高齢化などの人口問題を、人口学で定量的に正しく理解して議論しよう
研究テーマとその出会い
私の研究テーマは人口学の中でも死亡分析と数理人口学と呼ばれる分野です。私は大学院で数学を学んだ後、厚生省に入省し、将来人口推計を用いて公的年金の長期的な給付と負担の見通しを示す財政検証や、日本の死亡状況を数理的に示す生命表の作成等に携わりました。その中で、人口が年金財政に及ぼす影響の大きさに驚くとともに、自らが作成に携わった生命表が人口学で基礎的な概念として用いられていることなどを通じて、人口学への関心を持つようになりました。
研究テーマの魅力、面白さ
現在、わが国の平均寿命は国際的にトップクラスとなっていますが、第二次大戦直後は先進諸国の中で最も低い位置にありました。その後、急速な伸長を遂げるとともに今なお延び続けている日本の寿命は、国際的な関心も高い一方、その要因や今後の見通しについてはまだわかっていないことも多くあります。人口学では人口変数に関する数学的・統計学的分析を中心とする形式人口学(方法論)と、人口外部の社会経済要因などからの分析を中心とする実体人口学(人口理論)の両面から研究が行われます。私も、日本の死亡特性の表現にすぐれたモデルの開発、死亡モデリングに必要な数理人口学的方法論の深化、死亡の年齢パターンや死因構造の分析、死亡率改善に関わる社会経済要因の検討など、形式・実体両面の様々な角度からの分析を行っていますが、このような分析の蓄積から日本の長寿化の謎を解く鍵を発見し、解明していくことがこの研究テーマの面白さといえるでしょう。
学生へのメッセージ
経済学部の学生の皆さんは人口学をご存知ない方がほとんどだと思います。しかし、わが国の引き続く少子化・長寿化、またこれらの帰結である長期的な人口減少や急速な高齢化等の人口問題を定量的に正しく理解することは、これからの日本の社会・経済を考える上で重要であり、その基礎となるのが人口学です。人口学では統計データの質や指標の量的評価を重視しながら定量的分析を行うことから、地道な作業が求められる学問ではありますが、地に足をつけた人口問題の議論ができるようになるためにも、人口学に関心を持って頂ければと思います。
(2019年12月取材)
プロフィール
1991年 |
東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了(数学専攻) |
1991年 |
厚生省(現・厚生労働省)入省 |
2014 |
カリフォルニア大学バークレー校大学院Ph.D.(人口学) |
厚生省(現・厚生労働省)、国立社会保障・人口問題研究所を経て2019年より現職 | |
※プロフィール・職位は取材当時のものです |