慶應義塾大学経済学部・大学院経済学研究科 タイトルロゴ - HOMEへリンクKeio University  Faculty of Economics, Graduate School of Economics Title LOGO - Link to HOME
慶應義塾大学 経済研究所 Webサイトへリンク
Menu

HOME > 慶應経済について > 教員インタビュー > 小室 正紀

教員インタビュー
小室 正紀 写真1

教授 小室 正紀
日本経済思想史、特に江戸時代~明治時代の経済思想。福沢諭吉研究。

福澤諭吉を研究する面白さ

研究テーマとその出会い

学生時代は、ほとんど福澤の著作を読みませんでした。読むようになったきっかけは、日本の経済思想を専門としていたので、40代で福澤研究センターの所員になったことです。
その後、1990年代の末から『福沢諭吉書簡集』の編集委員の末席をけがすことになり、そのため福沢諭吉の手紙を読みましたし、その手紙に註や解説をつけるために、本格的に福澤の著作も読むようになりました。読んでみると、これが書簡も著作も面白く、どんどん夢中になっていったのです。そのような点では、所員とか編集委員という機会をつくっていただいたことがきっかけです。

研究テーマの魅力、面白さ

まず第一に、福澤の文章です。福澤の文章は、明快でリズム感があり歯切れがよく、読んでいて楽しく、しかも説得力があります。
第二には、福澤の書いているものは、その時代と正面から向き合っている議論だからです。しかも、その時代は幕末から明治の産業革命の頃までで、日本が試行錯誤をしながら近代化や工業化をしようとしている時です。その時代と取り組んでいる面白さです。
第三には、福澤は時代の流行の議論やはやりの主張にのりません。むしろ、そのような流行に反発し、それに冷や水をかけるような議論をします。しかも、その議論は、みずから観察しデータを集めて行われます。日本に珍しい独立した精神と知性に基づく議論で、読んでいて清々しくさえ感じます。
第四は、福澤の思想を調べていると、日本近代の異なった可能性が見えてくることです。福澤の主張は、日本の近代化の中で実現したものもありますが、多くは取り入れられませんでしたし、その最も根幹の部分は現実の日本社会には浸透しなかったと言っていいでしょう。ですから、彼の思想を調べると、現実には実現しなかったけれども、このように進むことも可能であったのかもしれないということがわかるのです。
現代の社会は、さまざまな問題や課題を常に抱えています。そのような課題に直面した時に、日本の近代社会の出発点に立ち返って考えてみることは意味があります。その時、福澤は、近代の出発点で別の可能性をかなりの影響力をもって主張していた者として、振り返る価値があるのです。

学生へのメッセージ

皆さんの、これからの人生の中で気が向いた時、何か少し骨のある本を読んでみたくなった時、何か考え方の手本をほしくなった時、ちょっと偉そうなことを言ってみたくなった時、落ち込んだ時、いつでもいいですから、ぜひ福沢諭吉の著作を読んでみてください。面白いですよ。

(2014年12月取材)
※プロフィール・職位は取材当時のものです。

プロフィール

小室 正紀 写真2

1973年

慶應義塾大学経済学部卒業

1975年

同大学大学院経済学研究科修士課程修了

1978年

同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学

2000年

博士(経済学)

学術振興会奨励研究員、慶應義塾大学経済学部助手、助教授を経て1996年より現職。
その間、

2003~8年

福澤研究センター所長

2007~9年

経済学研究科委員長

2009~11年

経済学部長

2014年

福澤賞受賞

To Page Top