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教員インタビュー
羽田 功 写真1

教授 羽田 功
ユダヤ人問題、民族問題、
近代ドイツ文学・思想

「教養」することにこだわりを・・・

「思い出」ということなので、まさに思い出すままにお話しします。 経済学部で教えるようになって40年近くになります。ドイツ語、自由研究セミナー、民族文化論、表象文化論などを担当してきました。研究領域の「ユダヤ人問題」は宗教、歴史、政治、経済、文化、メディア論など広範囲な分野にまたがるので、これをうまく授業に反映させようと努力してきたつもりです。と同時に、日吉キャンパスを拠点とする教養研究センター所長、日吉図書館長、高等学校 (塾高)校長などを兼務してきたこともあり、高校も含めた教養教育に関する議論やプログラム構築にも関わってきました。

また、義塾創立150年をきっかけとして生まれた福沢諭吉記念文明塾でも運営委員、プログラム・コーディネーターとして、立ち上げから10期まで関係し、塾生に限らず、多くの社会人や他大学の学生と触れ合う機会にも恵まれました。教養研究センターでは入学歓迎行事(現・新入生歓迎行事)の創設を通して、大学が持っているさまざまな可能性を新入生のみならず、彼らを迎える在校生たちとも分かち合う機会を得ることができました。「生命」を多角的かつ集中的に考えることを目的に、先端生命研究所のある山形・鶴岡市の義塾タウンキャンパス(TTCK)を拠点として開設した「庄内セミナー」では、文字通り普段とは違った庄内という地域の中に深く入り込んで学生たちと共に修験体験などのアクテヴィティをこなしたり、議論を交わしたりといった濃い(?)経験も積み重ねてきました。

そうした中で思ったこと、考えたことをいくつか並べてみます。
私の研究室がある日吉キャンパスはSFCを除く全学部の1年生が大学生活をスタートさせる場です。それだけに、日吉に限っても、私が向き合ってきた学生はじつに多様性に溢れており、教員として学生たちから多くのことを学ぶことができました。しかし、同時に残念ながら「教養」に対する意識の低さに呆然とさせられたことも少なくありません。とりあえず「より良く生きる」ための土台が教養だとすれば、たとえば図書館長の時に痛感したのは学生の本離れ・図書館離れです。日吉に限らず、義塾の図書館は蔵書数や種類の多さも含めて、日本でも有数の大学図書館だと思います。そこは汲み尽くしきれないほどの宝の詰まった「知」の宝庫であり、底知れぬ深さと広がりを持った「知」の迷宮でもあります。なぜ、それを「より良く生きる」ために積極的に利用しないのか―もったいない限りです。他方、4年ほど付き合った塾高生たちからは非常に高いポテンシャルが感じられ、大学・学部が彼らをうまく受け止められれば、大きな成長が期待できると確信しました。さらに、彼らが一貫教育校とは違った入り口から入ってくる学生たちと混じり合うことで生まれる空気の揺らぎや化学反応がこれまでにない何か新しいものの創造に結び付くのではないかという期待を抱かせてもらいました。

もちろん、普段のキャンパスでの生活の中で常態的に「より良く生きる」ことが意識化できたり、あるいはうまい受け止めの流れが確保されているならば、それに越したことはありませんが、しばしば「日常」はそれを阻み、緩んだものにしてしまいがちです。だからこそ、「日常」とは少し異なる環境に身を置くことが必要なのではないでしょうか。そこで体感するふだんと異なる世界、ふだん目に入らない景色は自分の過去を振り返り、現在を見つめ直し、自分の未来を展望するまたとない経験をもたらしてくれるはずです。文明塾や庄内セミナーはまさにそうした場であったと思っています。また、そうした体験を通して「より良く生きる」ための基礎・土台が築かれる、つまり、「教養」が培われていくのだと思います。

大学の4年間はあっという間に終わってしまいます。それだけに、この4年間を未来貢献のために活かしてほしい、そのためには、自分自身の基礎・土台である「教養」を一生かけて磨き、広げ、深めていく、そうした「教養」へのこだわりを持ってほしいと希望しています。

(2018年12月取材)

プロフィール

羽田 功 写真2
    

1977年

慶應義塾大学文学部卒業

1979年

慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了

1981年

慶應義塾大学経済学部助手就任

1982年

慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位所得退学

1988年

同 助教授就任

1995年

同 教授就任(現在に至る)

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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