准教授
三原 龍太郎
文化人類学、創造産業論、アニメ研究、日本研究
文化が国境を超えて展開する―その現場に参加しながら研究することの醍醐味
研究テーマとその出会い
私の現在の研究テーマは日本のアニメの海外展開で、その現場を文化人類学的フィールドワーク(エスノグラフィ)の手法で探究しています。幼少期の1980年代に米国ロサンゼルスに駐在員子弟として住んでいたときにベータマックスのビデオテープに録画された宮崎駿の『天空の城ラピュタ』を観て夜も眠れなくなるほど感動したものの、当時は宮崎駿のことを知っているアメリカ人がほとんどいなかったため、現地校のクラスメートとその感動を分かち合うことが全くできなかった、というのが自分の研究者としての原風景です。その後、約20年後に大学院生としてアメリカに戻ってきたときには誰もがミヤザキ(とジブリ)を知っていて、南米コロンビア出身のクラスメートが、自分が日本人だと知るや否や『Grave of the Fireflies』(『火垂るの墓』)について熱く語りかけてきたのを見て「何かが起きている」と直感しました。以来10年以上に渡って、アニメの海外展開を追いかけ続けています。
研究テーマの魅力、面白さ
先行者が(それほど)いない研究テーマなので、新しい分野を切り拓く面白さをいつも感じています。アントレプレナー的な面白さと言ってもいいかも知れません。また、フィールドワークの一環として、実際にアニメ作品が海外に展開する現場に国内・国外を問わず頻繁に足を運び、そこでプロデューサーや監督といった方々の実務を観察し、ときには参加さえするといったスタイルで研究していますが、そのような形で実務家の方々と「現場感」を共有しながら、アニメの海外展開について彼我の問題意識を突き合わせられるところが私の研究の醍醐味なのではないかと思っています。自分の研究をどのように現場に還元できるのかをいつも考えさせられますし、フィールドワークを通じて自分の「理論」が鍛えられていく手応えを感じることができます。
学生へのメッセージ
文化人類学は「一見些細に見える日々の個別的な事物からでも文化・社会一般に関して非常に多くのことを知ることができる」ことを我々に教えてくれています。アニメというニッチな趣味に属することがらでも、それを深く探究することで、芸術作品としてのアニメ、メディアとしてのアニメ、労働生産物としてのアニメ、著作物としてのアニメ、政策対象としてのアニメ、「西洋」や「アジア」の中のアニメといった、より広く大きな文脈が浮かび上がってきます。大学での学びを通じて、一見「些細なこと」であってもそれを見逃さない知的アンテナと、そこからより広い文脈へと思考を発展させていけるような知的キャパシティを身に着けていただければと思います。
(2020年12月取材)
プロフィール
2003年 |
東京大学教養学部卒業(文化人類学専攻) |
2003 |
経済産業省入省(~2012年) |
2009 |
コーネル大学大学院文化人類学研究科修士課程修了 |
2016 |
ロンドン大学東洋アフリカ研究院(SOAS)金融経営学部講師 (~2019年) |
2017 |
オックスフォード大学大学院文化人類学研究科博士課程修了 Ph.D(DPhil) |
2020年より現職 |
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※プロフィール・職位は取材当時のものです |