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教員インタビュー
Knaup<br>Hans-Joachim <br>(クナウプ<br>ハンス・ヨアヒム) 写真1

教授 Knaup
Hans-Joachim
(クナウプ
ハンス・ヨアヒム)

日独比較文化論
メディア論
ドイツ語

「学ぶこと・思考すること」 — 実験工房における実践的学習

私が日本を最初に訪れたのは1973年です。数カ月の滞在中に日本語の響きや多様な言い回しに興味を持つようになり、大学で日本語を専攻しようと決心するに至りました。ヴュルツブルク大学、ボン大学で言葉としての日本語を集中的に学ぶとともに、日本の歴史・文化についても優れた先生のもとで研究することができました。ボン大学を卒業した年に慶応義塾大学で非常勤講師として勤務することができるようになり、それ以降実に多くの慶応義塾の教員の方々と交流を深めることができました。それは私の大きな財産になっています。日本に来て間もなくローベルト・シンチンゲル先生の和独辞典作成に関わるという幸運に恵まれ、その編纂作業を通して翻訳の面白さと苦しさを知る経験をしました。

自由研究の授業のなかで学生と共に過した時間は忘れがたい思い出です。自由研究はすべての学部の学生に開放されている授業なので、例えば「響・言語・音楽-音の記憶と再現の可能性」をテーマにした時は、「音」に関心のある学生が集まり、一緒に日吉キャンパスのなかを散策しながら「音」の採取を試みました。また、擬音語・擬態語を扱った時には、中国、韓国の留学生も参加し、活発な議論を展開することができました。夏休みには、キャンパス内の留学生や、浅草など観光地の観光客にインタヴューを行い、それらの調査資料を持ち寄って、擬音語・擬態語の国際比較を行い、また学生たちにプレゼンテーションの効果的な方法も学んでもらいました。自由研究では、その他に「メディアの考古学-旧メディアvsニューメディア」、「CMの国際比較文化論-宣伝のストラテジーを考える」あるいは「ワイマール時代におけるラジオ放送-メディアによる情報の加速現象」などをテーマとして扱いましたが、その都度の学生との出会いや共同作業も私の財産になっています。

ドイツ語の授業においても、身体を動かしながら語尾変化や人称変化を学んでもらうために、学生にいろいろと考えさせ、一緒に実験したことが楽しい思い出になっています。グループごとに共同で、大学生活のパロディなどを題材としたスケッチや会話を作ってもらい、それを寸劇化し、さらに録音して小規模なラジオドラマ風のものにする ─ このような一種の制作体験を学生に味わわせるときに、NHKの国際放送で番組作成や発信に長く関わった自分の体験を生かすことができたことは幸せでした。

さらに、このような国際放送の番組作成の体験を基に、帰国子女やすでにドイツ語運用能力を身に付けた学生達と共に日吉で小さなテレビスタジオ風の実験工房を立ち上げ、ゲーテ、ヴァーグナー、アインシュタインあるいはカフカなど歴史上の偉人との架空インタヴューを実現しました。この企画は授業外のものでしたが、私の授業を受けていた学生の一部が興味を持って自発的に参加してくれたことはうれしいことでした。語学としてのドイツ語授業の枠組みのなかで、単に文法や表現上の誤りを直すだけでなく、ユーモアを交えながら創造的に学ぶ、また考えることを学ぶための場を提供するように努めてきましたが、それは多様な才能を持つ学生の存在抜きには実現できなかったものであり感謝しています。

また、海外での勉学を希望する多くの学部学生や大学院生が有利な環境で留学できるようにさまざまな形で援助できたことも、嬉しいことでした。キャンパス内や喫茶店などで個々の相談に乗りながら、一緒に最適な道を見つけだすべくあれこれ思考を巡らす時間は、日本留学を模索していた学生時代の自分の姿を想起させてくれる機会でもありました。

(2018年2月取材)

プロフィール

Knaup<br>Hans-Joachim <br>(クナウプ<br>ハンス・ヨアヒム) 写真2

1977年

ボン大学文学部日本学科日本学日本文学専攻卒業

1984年

横浜国立大学外国人教師

1996年

慶應義塾大学経済学部助教授

1999年

経済学部教授

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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