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教員インタビュー
長堀 祐造 写真1

教授 長堀 祐造
中国近現代文学

義塾の思い出、研究回顧

自由な学風と心地いい社中

慶應経済日吉の中国語教員として赴任してはや28年、じっくり最後の一年を楽しみながら定年を迎えたいものと期待しておりましたが、このコロナ禍で、感慨に浸る暇もないのは寂しいところです。
顧みるに経済学部の第一印象は、風通しのよさ、自由な気風が生きているというものでした。学部会議での自由な議論、若手教員も基本的に平等、管見の限り、何を研究しようが、誰を批判しようが、学問である限り許されるという気風があったと思います。
学生も私の経験してきた大学に比べると洗練されていて、あまり手がかからない印象でした。しかし、赴任後数年にして1989年の天安門事件の影響が薄らいでくると、中国語履修者が爆発的に増加し、すし詰め状態の教室で四,五〇人の学生相手に初級中国語を教えるのは大変だった記憶があります。学生にも気の毒なことでしたが、カリキュラム改革の結果、少人数クラスが実現して現状に到ったのは、皆さんの努力の結果でした。
大学は研究・教育の場であり、高校教員経験者としては過干渉にならない程度に「クラス担任」の役割に果たすことで「教育」方面にも気を遣ってきたつもりです。少なくとも、学生の自主的成長の邪魔をしないで済んだなら幸いと思います。

私の研究生活

研究方面では、私は魯迅が主な研究対象で、中でも魯迅とトロツキーをテーマにしてきました。私たちが大学生の頃には毛沢東・中国共産党・魯迅は三位一体の様に見られてきましたが、これはまさに神話の類いで、魯迅は状況に強いられて中共やコミンテルンに協力しましたが、ソ連やスターリン、さらには中共・毛沢東にまで危惧の念を抱いていたということを、実証的に明らかにしてきたつもりです。いきおい、中国新文化運動の主将で中共創立者にして、中国の福澤諭吉とも喩えられる陳独秀のことや、瞿秋白、毛沢東といった中共歴代指導者のこと、またゾルゲや魯迅の弟の周作人にいたるまで研究の範囲は広がりました。
いささか大袈裟に言えば、従来見落とされてきた細かな事実から、魯迅と毛沢東・中共との関係、中共党史の見直しを図り、魯迅をスターリン・毛沢東の陥穽から救うことを目指したということになります。ただ、少し遅すぎた嫌いもあるのが残念なところです。
主著の『魯迅とトロツキー』(平凡社、2011年。中国語版は台湾人間出版社、2015年。大陸では拙著の出版は困難ですが、中国の、特に多くの若手研究者が台湾版を読んでくれていることはうれしいことです)に魯迅研究とその周辺の主要成果を収録し、『世界史リブレット 人 陳独秀』(山川出版社、2015年)に陳独秀の小伝を新資料も踏まえ書いています。その流れで『陳独秀文集』全3巻(平凡社東洋文庫2016~2017年)を、翻訳チームを組んで出しました。この前段には、実は中共草創期の内情を書いた『初期中国共産党群像―トロツキスト鄭超麟回憶録』(東洋文庫、2003年、共訳)翻訳の仕事がありました。また、中国初のノーベル賞作家・莫言とは1990年代以降、短編集『中国の村から』(JICC出版局1991年)の翻訳者として交流があり、受賞後も自伝的小説『変』(明石書店、2013年)を翻訳しましたが、彼もある意味、魯迅の系譜を継ぐ作家と言えます。
長年にわたり、こうした研究活動ができたのは、やはり慶應義塾経済学部にいたからこそという面があります。今後もやり残した課題に取り組んでいきたいと考えております。
最後に義塾でお世話になった方々に感謝申し上げるとともに、すべての受講生の皆さんにエールを送りたいと思います。

(2020年12月取材)

プロフィール

長堀 祐造 写真2
        

1980年

東京大学文学部中文科卒業

1980~
1985年

東京、埼玉で高校教員

1987

早稲田大学大学院文学研究科博士前期課程修了

1988

同上博士後期課程中退

1988

桜美林大学文学部専任講師(中文科)

1992

同上助教授(~1993)

1993

慶應義塾大学経済学部助教授(中国語担当)

1998年

同上教授       現在に至る

2012

博士(文学)(慶應義塾大学)

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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