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教員インタビュー
坂井 豊貴 写真1

教授 坂井 豊貴
社会的選択理論、
メカニズムデザイン、
マーケットデザイン

社会制度は天や自然から与えられるものではなく人間が作るものだ

研究テーマとその出会い

多数決ってヘンですよね。2000年のアメリカ大統領選では二大政党の擁立するゴアとブッシュが争っていました。事前の世論調査ではゴアが有利。ところが「第三の候補」ネーダーが参戦、絶妙にゴアとの票割れが起こり、ブッシュが漁夫の利で勝ちました。多数決というくせに多数意見を反映するとは限らない。かといって少数意見を尊重するわけでもない。代替案として「1位に3点、2位に2点、3位に1点」と配点するボルダルールを使うとか、せめて決選投票を付けるとか、工夫が要ります。
小学生のころから多数決はおかしいと思っていました。記憶にあるのは、学級会で教室の前に立たされて「坂井君がふざけていて悪いと思う人」と多数決で決められたこと。ふざけていたかもしれないが、悪くはない。善悪は理屈で演繹して決めてくださいと思っていたら貧血を起こして保健室に運ばれました。
子供の頃に感じていた色々な疑問は、いまの研究に直結しています。それが義塾賞にまでつながったというと、なんだか良い話な気がしますが、そうではなくて単に自分は子供の頃から変わっていない。

研究テーマの魅力、面白さ

社会制度って所与のものではなく、人間が作っているものだし、昔から同じわけではありません。既存の制度を自明視してはならない。よい制度を数理的にデザインすること、それに現実的な妥協を加えること。世界の観え方が変わる魅力があります。
市場も投票も「でっかい計算箱」です。インプットを入れたらアウトプットが出る。市場は、需要と供給がインプットで、資源配分がアウトプット。投票は、投票用紙がインプットで、投票結果がアウトプット。両方とも計算箱として同じ枠組みで扱えるのは面白いです。
ただし私自身はいちいち研究に魅力を感じたり面白がったりしません。淡々と定理を証明して、延々と文章を書きます。昔は情熱だけで動いていましたが、今は締め切りだけが私を動かします。諸行無常です。

学生へのメッセージ

言葉に使われるんじゃなくて、言葉を使えるようになってほしい。言語は色眼鏡です。何もかけないわけにはいかないから、二つか三つかけて複眼的に思考できるといいですね。経済学も一つの言語です。喋れるようになるといいね。経済学をきちんと勉強してほしいけれど、それだけだと物の見方は偏見じみてくるかもしれない。だからたくさん本を読むとよいですね。実証政治学の大家である猪口孝先生は「学生の間に2トンの本を読もう」と仰っていますが、私はそこまで申しません。一か月に5キロとして、年間60キロくらいでよいです。経済学部生には数学にも時間を割いてほしいから、量はそのくらい。一緒に勉強しましょう。

(2016年1月取材)

プロフィール

坂井 豊貴 写真2

1975年生まれ。ロチェスター大学経済学博士課程修了(Ph.D.)。
横浜市立大学経営科学系准教授、横浜国立大学経済学部准教授を経て、2011年より慶應義塾大学経済学部准教授、2014年より同教授。
国際学術誌に論文多数、著書多数。
近著の岩波新書『多数決を疑う』は2016年新書大賞4位。2015年義塾賞。

※プロフィール・職位は取材当時のものです

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