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教員インタビュー
井奥 洪二 写真1

教授 井奥 洪二
物質・材料科学、医工学、環境科学、文理連接学

未来を創る塾生たちにエールを!

経済学部での教員生活の思い出について

慶應義塾大学に2012年4月に着任し、授業では「化学I, II(実験を含む)」と「経済と環境」を担当しました。私の大学教員としてのキャリアは1989年4月に高知大学理学部で始まり、つづいて山口大学工学部・同大学院医学研究科、その後は東北大学大学院環境科学研究科で理系学生への科学技術教育と研究に取り組んでいました。研究が軌道に乗り始めた2011年3月11日、私は東北大学青葉山キャンパスで東日本大震災に被災し、福島第一原発の事故に怯えながら科学技術のネガティブな未来像を思い描いていました。科学技術を社会に活かすためには、人の要素を軽視してはならず、サイエンスとテクノロジーだけでは早晩無理が生ずるということを嫌と言うほど思い知らされました。人生の一瞬でも構わないから未来のリーダーになり得る優秀な文系学生に文理連接の観点から理科教育をしたいと強く願い、それが実現できたのは実に幸運でした。
「化学I, II(実験を含む)」は2コマ連続して講義と実験を隔週で行うユニークな授業科目です。受講生のスタートラインは化学を勉強した記憶がほとんどないという者から化学が好きで高校卒業まで勉強したという者までが混在しており、授業のレベルをどうするのか、評価はどのようにするのが適切なのか考えさせられました。そこで、化学の基礎事項から積み上げていくオーソドックスな授業ではなく、これから激動の30年間が予想される環境、エネルギー、生命科学、医療などをテーマとして、来る未来社会の課題を提示し、科学技術を文理連接の観点から説明することにしました。この授業に最後まで取り組めば、化学の重要な項目、すなわち原子、分子、化学結合、物質の三態、酸・アルカリ、酸化・還元、アミノ酸、タンパク質、遺伝子、光、放射線、量子化学などを一通り勉強できるように工夫しましたが、そのような教科書はどこにもないため講義の教材はすべて手作りでした。実験では、人類史上初めて人工合成された医薬品や合成繊維を作ることに取り組み、歴史的背景や知の巨人たちの残したことば、経済、法律とも結び付けて考えさせました。化学に苦手意識を持っていた学生も積極的に産業革命や現代の化学産業や臓器移植法案の改正などを調べ、化学の授業を面白く感じてくれているようでした。あるとき、私の誕生日に授業冒頭で学生たちがクラッカーを鳴らして「先生、お誕生日おめでとうございます!」と言って誕生日を祝ってくれたのには、驚きのあまり尻もちをついてしまいそうになりましたが、思わず目頭が熱くなりました。こうしたことは自身の学生時代に考えたこともなく、彼らの豊かなアイデアと行動力にはつくづく感心させられたものです。
一方、「経済と環境」は、河端瑞貴さんとの共同担当で14年間共に一度も休むことなく、納得の皆勤ゴールを迎えることができました。この講義で私は地震と防災、地球温暖化、海洋酸性化、プラスチック汚染、内分泌撹乱化学物質、アスベスト、再生可能エネルギー、原子力発電、核廃棄物などを扱い、日本各地を調査した生の情報を学生たちに伝えました。こちらの熱意が伝わったのか、授業終了後には講義室での質問やK-LMSやメールによる質問だけでなく、週末に研究室に訪ねてくる学生もいました。2026年1月19日の講義最終回では、終了後に10人ほどの学生たちが寄ってきて「大学入学以来、これまでの授業の中で最高に面白かった」「普段気にもしていなかったことが次ぎ次ぎに紹介されて、本当に考えさせられた」「退職された後もアドバイスしてください」などと言われて胸が一杯になりました。
退職後は、他大学で理系の教育に取り組みますが、慶應義塾大学での経験を活かして、文理連接の観点から文・理の若者たちと科学技術の未来について考え続ける所存です。充実した日々を提供してくれた慶應義塾大学経済学部の皆様に心から感謝申し上げるとともに、塾生たちの活躍を祈りエールを贈ります!

プロフィール

井奥 洪二 写真2

1984年

上智大学理工学部卒業

1986年

上智大学大学院理工学研究科博士前期課程修了

1989年

東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程 単位取得退学

1990年

工学博士

高知大学理学部助手、東京大学医学部研究員(兼任)、山口大学工学部助教授、順天堂大学医学部特別研究員(兼任)、山口大学大学院医学系研究科助教授、東北大学大学院環境科学研究科助教授、同教授を経て2012年より現職。委員歴は、日本MRS常任理事、日本セラミックス協会誌編集委員長・同常任理事、文科省科研費新学術領域研究審査委員、PMDA専門委員、NEDOプロジェクト委員、慶應義塾大学自然科学研究教育センター所長など。表彰等は、MRS国際会議若手研究者賞、無機マテリアル学会永井記念奨励賞、山口大学教育改善提案表彰(教育アイデア賞)最優秀提案、キャンパスベンチャーグランプリ特別賞、アジアバイオセラミックス賞、日本無機リン化学会学術賞、日本セラミックス協会学術賞、タイ王国チュラロンコン大学訪問学者、トルコ共和国ユルドュス工科大学から科学技術の協力に関する感謝状、World’s Top 2% Scientists、慶應義塾Hidden Jewelsなど。

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