
教授
大沼 あゆみ
環境経済学(とくに生物多様性の経済学)
環境経済学と半学半教
経済学部での教員生活の思い出について
2001年4月に着任しました。それ以後、25年間、経済学部で教育に携わることができたことは本当に幸運だったと思います。特にゼミ(研究会)については、慶應義塾の経済学部では教員・学生の双方に強い思い入れが伝統として残っていると感じました(2年間ゼミを完遂し卒論を提出して、12単位が一挙に認定されたという当時の制度面も影響していたと思います)。夜遅くまでグループワークを行ったり、学生たちが自発的に合宿を企画して議論を続けたりする姿を見ると、教員としてもかなり真剣に向き合う必要を感じさせられたものです。年齢を重ねると、利害関係のない友人がいることのありがたさを知ることが多くなります。大学時代にゼミを通じてこうした友人を得ることは一生の宝になることであり、ゼミ生が卒業後も密な関係を続けていることを知ると、教師としてそのような場を提供できたことに喜びを感じます。
私のゼミでは、主として環境経済学や資源経済学をテーマに、さまざまな環境問題と人間社会の関係を経済学の視点から考えることを中心にしてきました。たとえば森林や生物多様性、地域社会と自然資源の関係など、一見すると経済学の分析とは距離があるように見える問題も、経済学の方法を用いることで新しい理解が得られることがあります。理論やモデルを学ぶことはもちろん重要ですが、それと同時に、現実の社会や環境の問題を経済学の視点からどのように考えることができるのかを学生と議論することを大切にしてきました。
ゼミ活動の中で印象に残っている出来事の一つに、兵庫県豊岡市で行った夏合宿があります。私は研究の関係で豊岡を何度か訪れていましたが、その縁もあって学生とともに現地で合宿を行い、フィールド学習を行いました。宿泊先として城崎温泉の、私自身でもなかなか泊まる機会のないような旅館に泊めていただいたことも忘れられません。その旅館の社長と奥様が慶應義塾の出身であるというご縁から、破格の料金で受け入れていただいただけでなく、歓迎会まで催していただきました。その席では地元のさまざまな地酒まで用意していただき、学生たちにとっても忘れがたいひとときとなりました。卒業後も、今なおよく語られる思い出の一つになっているようです。慶應義塾のネットワークの強さと温かさを実感する出来事でもありました。
ゼミの学生たちとの議論の時間はもちろん、講義のあとに学生から寄せられた鋭い質問も印象に残っています。応答を通じて、学生が少しずつ自分の考えを深めていく姿を見ることは、教員として大きな喜びでした。一方で、こうした議論や質問から、自身の研究の展開や視点に大きな刺激を与えられることも少なくありませんでした。さらに言えば、毎週学生に課していた、環境に関わる話題やニュースを紹介し簡単に考察してもらう場から、未知の環境問題の存在を知ることも多かったのです。これらは慶應義塾の掲げる「半学半教」とも言えるでしょう。このような環境の中で教育に携わることができたことは、私にとって大変恵まれた経験でした。これまで出会った学生の皆さん、同僚の先生方、そして研究・教育環境を支えてくださった職員の方々に、心から感謝したいと思います。経済学部で過ごした25年間は、研究者としても教育者としても、私にとってかけがえのない時間でした。
プロフィール

1983年 |
東北大学経済学部卒業 |
1985年 |
東北大学大学院経済学研究科博士課程前期修了 |
1988年 |
東北大学大学院経済学研究科博士課程後期単位取得退学 |
1989~2001年 |
東京外国語大学外国語学部専任講師、助教授 |
2001年 |
慶應義塾大学経済学助教授 |
2003年 |
同大学同学部教授(現在に至る) |



