専任講師
平野 邦輔
文化人類学、マイノリティと社会生活、日本・韓国研究
日常生活における「違和感」から文化・社会を考える
研究テーマとその出会い
大学生の頃から今まで色々なテーマを扱ってきたので一言で表現するのが難しいのですが、マイノリティと社会生活、という表現が合っている気がします。私自身、学校などの集団生活に馴染めないことも多く、ある社会において抑圧や居心地の悪さを経験する個人や集団の様相や、文化や社会が個人の思考や行動に与える影響、個人の独自性が環境を変える可能性、などについてよく考えていました。
大学三年の夏、アメリカに滞在した際に日系アメリカ人強制収容の歴史やアメリカ社会におけるアジア系アメリカ人の存在を知り興味を持ちました。その後は英語の本を読むようになり、日本を研究対象として英語で研究を行う、という職業の選択肢があることを知りました。会社で働くのも気が進まなかったので、一度アメリカで研究したり生活したりしてみようと思いました。また、アメリカの博士課程は大学院生への財政援助や研究費が充実していたのも魅力でした。その後、紆余曲折あったのですが、英語における日本研究(Japanese Studies)という分野で勝負してみることにしました。研究テーマはいつも日常生活の中にあると考えています。
博士論文では日本における変わった学校(オルタナティブ教育)でフィールドワークを行い、いわゆる「普通」の教育への違和感を共有する人々が作る場において、生徒がどう人間関係を構築し、学校生活への参加を行うのかを分析しました。
研究テーマの魅力、面白さ
日本出身者として英語で日本研究を行う場合、日本をめぐる外側からの視点、そして内側からの視点といった違いを意識しながら、日本をめぐる知識の生産の最前線に立てる点にやりがいがあります(ウチ・ソトといった単純な二項対立的思考も良くないのですが)。また最近は東京における電車移動の経験が個人の思考様式や行動にどう影響を及ぼしているのかといったテーマに取り組んでいます。都市交通と個人の生活に関して、英語では人類学的なアプローチでかなり研究が進んでいます。
英語圏における日本研究は歴史的な蓄積があり、日本にも多くの研究者が調査のために訪れています。ただ、日本語で日本を対象にして行っている研究がそのような研究者の間で多く参照されているか、といえばそうでもありません。極端な話、分野によっては日本をテーマにした研究であっても、英語で書かれた著作のみを参照してその道の第一人者になることが可能な場合もあります。このような英語圏と日本語圏の研究のギャップを埋める仕事にもやりがいを感じます。
学生へのメッセージ
楽そうだからと選んだ第二外国語(スペイン語でした)を落として留年しかけ、必修の英語も寝坊が多く出席ギリギリで、他の授業もサボったりあまり聞いていなかったりして成績が振るわなかった結果、三年生の時に希望の学科に行けなかった私が、今では教員になっているのも皮肉な巡り合わせだなと思いつつ毎回出席をK-LMSに記入しています…というのはさておき、語学は若いうちにやっておいた方が良いです。私は三十代で韓国語を習い始めましたが(ミシガン大博士の卒業要件でした)、十代や二十代のクラスメートの上達を羨む韓国留学でした。若さは今のうちだけなので、コスパ等にとらわれず、なんでも良いから打ち込めるもの、そして仕事につなげられそうなヒントを見つけると良いと思います。
プロフィール
2007年 |
東京大学文学部卒業(日本語日本文学) |
2009年 |
東京大学総合文化研究科 超域文化科学専攻 文化人類学コース修了 |
2009年 |
公益財団法人日本人事試験研究センター研究開発本部入職 |
2013年 |
ボストン大学人類学部修士課程修了 |
2021年 |
ミシガン大学アジア言語文化学部博士課程修了 Ph.D. |
ソウル大学比較文化研究所訪問研究員、東京経済大学特任講師を経て2023年より現職 |